底無しトンネル物語U-4
嵐は来なかった。雲から覗く月下の元、僕は埠頭のアスファルトに大の字で寝そべった。
そうだ……週末にでも弁償しよう……。
もちろん。その時はミサトの誕生日プレゼントも添えて──
以上でこの『底無しトンネル物語』は終了だ。結局この後山下先生は捕まり、裏で暗躍していた麻薬の密売組織も検挙されたそうだ。
タケルは山下先生が捕まったことで「科学の授業が自習だぜー」なんて喜んでいたが、もっと厳格な小林先生が登場したため、えらく嘆いていた。
ミサトはあの後にすぐ目を覚まし、一体自分に何が起こったのかすら気づいていないようだ。無論、事件の真相も知らされていない。
そしてようやく新聞係りの四人が揃い、みんなで天狗山で写真を取ることができた。あれ以来カメラは使い捨てを利用しているが、それ以外の日常は全く変わっていない。
僕らが高校に上がる頃トンネルを迂回する新道が完成したため、トンネルは壊されることとなった。
「早くー急げー遅刻するよー」
ミサトの声が聞こえる。彼女とは一緒の高校に通い、最近付き合い始めた。
かつてミサトと共に下校し、僕らが事件に巻き込まれる原因となった『底無しトンネル』も色々な思い出とともに消える。
もう二度と トンネルを見ることはできない
『完』