戦争を知らないあたしと、お爺ちゃんの戦争-6
「終わったんじゃ……」
「なーにぃ……お爺ちゃん? なんか言った」
あたしは家の残骸にむかって、さっきからブツブツ呟いているお爺ちゃんに向って、尋ねました。
「本土空襲…… 原爆投下…… 終戦…… 終わったんじゃ、何もかも、終わったんじゃな」
そう言って、お爺ちゃんはいつまでも、いつまでも、夜空を見詰めていました。
そして…… そんなお爺ちゃんともお別れの日がやって来ました。
お爺ちゃんのお葬式の日。
大勢の人たちが弔問に来てくれました。
弔問に訪れてくれた人達は、口々に囁きます。
「まったく惜しい人が亡くなりましたね。今年で6歳になる坊主にも、是非会って頂きたかった」
「まったくですね。橘さんは退屈しない人でしたからね。ぼくなんか5回も、コンビニの前で殺されましたよ」
「いや〜そうでしたかぁ。実はわたしも6回ほど殺されてましてね。あの時は楽しかったなぁ」
そんな会話をして、亡きお爺ちゃんを忍ぶサラリーマンの人。
「『橘 太呂平(たちばな たろへい)』さんの慰霊に向って…… 敬礼っ!」
”ザザッ!”
と、総勢20人、集まった警察官の方々もお爺ちゃんに最後のお別れをします。
「少尉さんよ、あんたの事はぜってぇ忘れねーぜ!」
「何たって俺達のヒーローだもんな!」
「爺さん! あんたは俺のダチだ! ダチの孫をイジメる奴がいたら、俺がぶっとばすぜっ!」
「よーーし皆っ! 俺達の大先輩、少尉さんの野辺送りだ! それっ野朗ども吹かせっ!」
『オオーーッ!!』
”ブオンブオン! バリバリバリッ! ピャラリラピャラリラッ!!”
集まった暴走族の人達も、最後のエールを送ります。
お爺ちゃんの棺を載せた霊柩車が静かに走り出し、その後姿が小さくなると、皆が一斉に沈黙し、眼に涙を浮かべました。
そんな彼らに向ってお爺ちゃん、
「さらば、友よ!」
そう言った気がした。