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戦争を知らないあたしと、お爺ちゃんの戦争
【コメディ その他小説】

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戦争を知らないあたしと、お爺ちゃんの戦争-3

 しかしながらお爺ちゃん、そんな彼らの脅し文句などに屈することもなく、仁王立ちしたまま声を張り上げます。
「たるんでいる! お前達はそれでも誇り高き海軍の戦闘機乗りだと言うんかっ! まっこと栄光のゼロ戦が泣いているぞっ!」
 ぜ……ゼロ戦っていったい…… 海軍ってなに?
 あたしは勿論、暴走族の人たちも呆気にとられます。
 ところがお爺ちゃん、そんな彼らにはお構い無しに言いたい放題、事も有ろうに、暴走族のお兄さん達相手にお説教を始めました。
「日本男児たるや、そんなことでどうする! お前達にも家族がおるだろう! 本土に残った家族を守らんでどうする! わしの様な老いぼれを構っている暇があったら、さっさと敵陣へと殴り込まんか! ばかどもめらが!」
 そんな事を言われて、暴走族の方々も黙ってはいません。
「ざけんじゃねーぞジジイ! てめーはもう直ぐ死ぬからいいけどよ! 俺たちは死ぬ気なんかねーんだよ! こんなところでマッポにパクられてたまるかってんだ!!」
「そうだそうだ! こんなポンコツバイクで何が出来るってんだ! やりたきゃジジイ、お前が勝手にやれってんだ!」
「貴様ら! 我が大日本帝国が誇るゼロ戦を愚弄(ぐろう)するかっ! 海軍もそこまで地に落ちたかっ!!」
 だからあれはただのバイクだってば。それにこの人達って、海軍じゃ無いし。
「やいジジイっ! 黙って聞いてりゃ言いたい放題! てめえに俺達の何が解かるってんだよ! 山本長官だっておっ死(ちん)んじまったんだ。今更俺達に何が出来るっていうんだ!」
 そうそうごもっとも。バイクに命なんか掛けなくても良いと思うよ。
「お前達にはまだ、命が有るじゃないか! 戦って、戦いぬく、それがゼロの男達の鋼鉄の意志だったはずじゃ!!」
「けっ! ばか言ってんじゃねーよ…… ゼロの先には……何も有りはしないんだ……」
 おいおい何いってるかなお兄さん! お爺ちゃんのペースに巻き込まれてどうする。
「もういい! お前達のような小僧どもに任せてはおけんっ! ワシが日本男児の誇りと言う物を見せてやる! さっさとそのゼロ戦から降りろ! ワシが操縦する!!」
 何を思ったかお爺ちゃん、突然、暴走族のリーダーさんの乗っているバイクを奪い取ろうと、彼の腕に掴みかかります。
「やろうジジイ! 舐めてんじゃねーぞ! ぶっ殺すぞっ!!」
 当然リーダーさんも抵抗します。
 そんな折り。
”フォンフォンフォンフォン……”
「やばいぜ兄貴っ! マッポだ! マッポが来ちまったっ!!」
 けたたましいサイレンと共に、数台のパトカーがこっちへやって来るではありませんか。
 途端に蜘蛛の子を散らして逃げ出す暴走族。最早誰一人ボケたジジイなんぞを構っていられない。
「やろうども逃げろ! 燃料(ガス)の続く限り逃げて逃げて、逃げ捲くれっ!!」
 そんな彼らを見て、お爺ちゃんは悔し涙を流し。
「なさけない…… これが日本の男の姿だと言うのか…… これが誇り高き海軍のゼロ戦乗りの姿だというのか」
「お爺ちゃん……」
 なんども言う様だけど、かれは軍人じゃないって。暴走族だってば。


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