僕は波だ。-1
人は人生を生き急ぐ。
忙しい靴音も。
車のラッシュも。
目まぐるしい情報の流れも。
君も。
そして、僕自身も。
僕は仕事を理由にすべてを後回しにしてきた。
それは大切な選択もあった。
幾つかの涙も見ないふりをした。
家族も悲しませた。
何故?
そんなに大切なものは何?
それがわからない。
この流れに身を任せて、
自分の気持ちは海の底に沈んでしまった。
深く深く。
手の届かない場所まで。
それに気付かず僕は必死になって目的地もない海原をただ溺れないように泳いでいたんだ。
もしかしたら
もう溺れていたのかもしれない。
服を着たまま冷たい海を彷徨い続ける。
服にはしがらみとか束縛、金、仕事が染み付いて重くなった。
その着心地のわるさにも気付けないまま泳ぎ続けた。
岸は見えない。
僕は彷徨う波だ。
外から見ると心地よさそうに刻む波に見えるかもしれない。
しかし僕は混沌として、
行き先のないまま、
それを求めないまま時間だけがクルクルと廻り続ける。
きっとこのままじゃこの染み付いたモノたちの重さで
顔を水面へ浮かべることすらできなくなってしまうだろう。
僕は波。
他の波を見てみた。
いや、比べてみただけ。
少なくとも僕には何かに向かってそれらが泳いでいるように見えた。
そんな事を羨んで自己嫌悪。
僕は目標のない波だ。