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恋する少年少女
【青春 恋愛小説】

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恋する少年少女【1】-4

「あ!翠、あぶな…――!」
茜の声で止まろうとしたが、勢いあまって黒板消しをしていた週番の子にぶつかってしまった。
そしてアタシはその子の手から落ちた黒板消しで制服を白く染めるのだった。


どうしてこう、要領が悪いのか…

アタシは自分の鈍臭さを恨みながら、手を洗うべくトイレに向かった。
その途中…
「あ!コンビニで告白した子!」
そんな声が廊下に響き、アタシは真っ赤になって振りかえった。
そこに居たのはアタシを指差す男子生徒…――昨日コンビニにきた春日くんの友人だった。
整った顔立ちの彼は、最初爽やかに笑っていたが、制服を真っ白にしたアタシを見ると顔を皺くちゃにして大笑いした。

「あはははは!何してんの!?」

ほぼ初対面の人に馬鹿にされたように笑われ、アタシは恥ずかしと怒りでまた顔を赤くした。
一気に不機嫌になったアタシは彼を無視して歩きだした。…が、回り込んで彼はアタシを止めた。
「ごめん、笑っちゃって…。本当にどうしたの?」
彼は話ながら、アタシの頭に付いたチョークを払ってくれた。
浮かれて教室内を踊り回ったなんて恥ずかしくて言えない。アタシは適当に言い訳をした。

「あの、さっきみたいに呼ぶの止めてください。春日くんになんて聞いたか知らないけど…」
アタシは子供のように頬を膨らませ彼を睨んだ。長身の彼は、睨みやすかった。

彼は謝罪の言葉を述べると、今度は自己紹介してきた。
「俺、夏目 旭(なつめ あさひ)。知っての通り省吾の友達ね。さっきはごめん、名前知らなかったからさ咄嗟に…」
申し訳なさそうに頬を掻くと、優しくアタシの制服に付いたチョークを払ってくれた。
無礼なのか優しいのかよくわからず、アタシは夏目くんを見た。
視線に気付いた彼はにこりと微笑むと学ランの裾をアタシの顔に擦り付けた。

「昨日省吾に話を聞いてからさ、どうしても話したかったんだ」
アタシの顔に付いたチョークの汚れは、夏目くんの学ランに移っていく。
アタシは申し訳なくて一歩後退しその行為から逃げた。
「まだ付いて…」
「トイレで洗うからいーの!これ以上やると夏目くんの学ラン、白くなっちゃうもん。それより…アタシと話したいって、どうして…」
顔の汚れを多少気にしながら、アタシは夏目くんの話を促した。

「笹部サンに頑張ってほしくて!省吾のやつ昔っから女っ気なくてさぁ、心配してたんだよ。でも笹部サンとは話してたから、もしかして可能性アルんじゃないかと…。あいつ口悪いけど子供なだけだから、気ぃ悪くしないで頑張ってね」

春日くんの親友に応援されて(しかも超かっこいい爽やか笑顔で)、アタシはもう恐いものなしだった。
ふたつ返事で「もちろんです!」と胸を張った。

夏目くんがすごく嬉しそうに笑うので、つられてアタシも笑みを浮かべた。

そう。はたから見れば、まるで恋人同士がイチャついているように微笑みあう。

それが良くなかった。

アタシはさっさとトイレに駆け込んで、おとなしくチョークの汚れを落としていれば良かったのだ。


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