恋する少年少女【1】-3
「なんて声出してんだよ、二人とも。うそうそ。ごめんね、馴々しく触っちゃって…。じゃ、一時間後な」
春日くんの友人は、終始爽やかな笑顔を浮かべ去っていった。
残されたアタシは、さっきの嫌そうな声を出した春日くんにショックを受けていた。
「友達?」
分かりきってたことだけど、会話の糸口にと思いアタシは質問した。
「…。んー…まぁ」
思ったより元気の無い答えが返ってきた。むしろ、先程よりアタシとの会話をめんどくさがっているようにも思えた。
「友達かっこいいね」
春日くんには負けるけど…と、付け足そうとしたら先に春日くんが口を開いた。
「なんだお前…」
「え…?」
「顔がよけりゃ、誰でもいいのかよ…サイテーだな。」
それからもう、春日くんはアタシを見てくれなくて、避けるように仕事をしはじめた。
アタシは急に機嫌が悪くなった理由がわからず、とりあえずコンビニを出た。
しばらく歩くと、温かいものが頬を流れ落ちた。
確かに一目惚れで、春日くんの内面のこと何にも知らない。
今見た友達だって、顔を見てすぐにかっこいいって思ったけど
春日くんは
笑っていようがいまいがキラキラで
声が聞こえるだけで胸が弾けそうなくらいドキドキなんだから…
「急にあんなに怒るなんて…アタシ、相当嫌われてんのかな…」
アタシは人の目も気にせず大泣きして家路についた。
「それって『ヤキモチ』じゃないの?」
翌日の教室。
昨日の出来事をオーバーリアクションで語っていたアタシに、友人・茜(あかね)はそんな言葉を投げ掛けた。
アタシは驚きのあまり無言になり「え?」と言う表情を浮かべ、首を傾けた。
「つまり奴は、翠がその夏って人を誉めた事に怒ったんでしょ?」
茜が人差し指をたてて状況をまとめだすと、まわりにいた友人達は「あ〜!」と感嘆の声をもらした。
「なんだラブラブかよ」
「やったじゃん翠!押せば彼女になれるよ絶対」
友人達は各々、この展開に呆れたり、まるで自分の事のように喜んだりした。
アタシはそんな友人達を見て、やっと状況を理解し満面の笑みを浮かべた。
ヤキモチ?
あの春日くんが?
このアタシに!?
調子に乗ったアタシは、嬉しさのあまり教室中をくるくると回る。