狸─PONPOKO─-2
五.
───たぬきさん たぬきさん 遊ぼうじゃないか───
───今 ごはんの 真っ最中───
───おかずはなあに───
───うめぼし香こ───
───ひときれちょうだい
あらあらちょっとがっつきね───
都会へ逃げて行った狸たちが夜、歌っている歌です。本当に毎晩歌っているのです。ただ、都会の喧騒にかき消されて聴こえないだけなのです。聴こえない歌を歌いながら、消えてしまった故郷を思いながら、懸命に生きて
いるのです。こんな都会の狸たちの昼間は───。
あなたの周りの人々は本当に人間でしょうか。人間はあなただけ…などという事はないですか。こんな事を考えながら時々は狸たちの事を考えてみて下さい。私たちの幸せの下には多くの自然の犠牲があるという事を。
窓を開けてみて下さい。そして目を閉じて下さい。ほら聴こえて来たでしょう。今夜も風に乗って何処からか、あの歌が……。
了。