あの日憧れた場所-3
映画が…
映画が観れるんじゃぁ…
少年はその夜、親が寝静まったのを機に、こっそりと家を抜け出して、にやけながら街へと走った。
「あっ、危ない危ない。警官に見つかったら、100叩きやわ…。」
さすがに浮かれすぎた少年も、夜回り警官の気配を感じ、慎重に目的地へと行くことにした。
そして、映画館についた…
少年はその時、例え様のない気持ちの高鳴りに全身が震えていた。
やっと、やっと映画というものを観ることができるんだ
少年は自分を待っていた大柄の男の手をとり、ゆっくりと未知の世界へと入っていった。
ああ…これが映画館の中…
素晴らしい…
今まで見てきたものの中で一番すごい…
夢を見ているようだ…
「さぁ、ここに座って、今スクリーンに映像を写すから…。」
スクリーンと呼ばれる白く大きな紙が光り出した。少年はその光を追って後ろを向くと、見たことのない機械がそこにはあった。
これが…映写機…
「すごい!なんてすごいんじゃぁ!」
感動のあまり少年の目には、いつしか涙がたまっていた。
「ほら、始まるから!前を向いて。」
はっ!と思い、少年はすぐに前を向いた。