わたしと幽霊 -声--2
――そっと目を開ける。
涙で視界がぼやけてる。
「おい…大丈夫か」
聞こえたのは、高谷さんの心配そうな声だった。
緩慢な動きで、視点をずらす。
あれ?高谷さん…
だっていまさっき……
…あぁ……。
「そっか……」
そういうことか…。
あたしはぼうっ、と室内を見回した。
あの凄まじい激痛が余韻のように、あたしの体にまだ残って疼いている。
うす暗い自分の部屋の中。
今、あたしが寝てるのは自分のベッド。
「頭、まだ痛むか?」
見下ろす高谷さんの声に、あたしは首を傾げた。
頭が痛む?
「うん…全身が痛い…」
「全身?まさか、副作用か…?」
副作用?何のことだろ。
それよりもね、高谷さん。
早く…言わなきゃ。
「…見たよ、夢の続き」
あたしは精一杯のぎこちない笑みを浮かべた。
……高谷さん?
てっきり話に飛び付いてくるかと思ったけど。
彼は神妙な顔のまま、首を横に振った。
「また後でな。暫らくゆっくり休め」
そう言い、床に座り…彼はベッドに背をあずけ、腕を組んで目を閉じた。
「あ、うん…」
ん?なんか機嫌悪そ…
あたしは言われたとおり、しばらく休むことにした。
体がひどくけだるくて、正直、喋るのもつらい。
いっそ、寝たほうがいいんだろうけど。
あの痛みが甦りそうで…恐くて寝たくなかった。
「ふわぁ〜〜」
…なんて、いつの間にかちゃっかり寝てた。
あたし呑気だからなぁ。
うーんと伸びをしながら時計を見る。
午後6時40分。
高谷さんは、まだベッドの脇に腕を組んで座ったまま。
寝てるのかな…寝たフリ?
てか幽霊って寝るの?
あたしはじと〜っと、彼の横顔を見た。
うわ、あたしより睫毛長い。いいな〜。
「高谷サ〜ン」
呼んでみても反応ナシ。やっぱ寝てる。
あたしは彼を起こさないようそろ〜っとベッドから抜け出し、制服から部屋着に着替えようと、服に手を伸ばす。
もっかい振り返る。
…寝てるよね、よし。
シャツのボタンを外そうとした。
「…ちょっと待て」
背後から急に聞こえた声にびくぅっ!とするあたし。
「あはっ…起きた?ちょっと後ろ向いててねっ」
固まるあたしに、しかし高谷さんは立ち上がると…
「終わったらドア開けろよ」
こっちから顔を逸らしたまま、壁の向こうへ消えてしまった。
ああびっくりした…
てか、別に後ろ向いてくれてればよかったのに、わざわざ外すなんて高谷さんたら意外に硬派?
意外じゃないか、いかにも堅そうな感じだもん。
暑くなったら――
もうすぐ夏だけど、服装とか口うるさく言われそぅ…うわぁ。
あたしは手早く着替え、ドアを開けた。