反抗期。-2
そして
彼は水面の変化にようやく気付いて
ニヤって笑って
「買ったら帰りラーメンね!」
と呟いてから必死に糸を手繰り寄せた。
ラーメンも悪くないなぁ。
おれもニカって笑い返したが、魚と格闘中の彼には気付いてもらえなかった。
魚も弱ってきたらしく、反応も単調になってきた。
慎重に手元まで近付ける。
水面にしぶきをあげて一匹のニジマスが顔を出した。
「父ちゃん!バケツ!」
久しぶりに父ちゃんて呼んでくれたことがうれしかった。
「ほら。ここだぞ!」
と彼の足元にバケツを置く。
空中を飛び跳ねる流線形のそれはチャポンとバケツに落ちていった。
「やったな!」
おれらは笑顔で見つめあった。
なんか胸がそこばゆいような感覚だ。
「おまえ自分の力だけで、よく釣れたじゃん。」
「当たり前だよ!」
会話もスムーズに流れる。
彼も照れ隠しの笑みがこぼれる。
それからしばらく釣り勝負に没頭し、
息子は3匹。
おれは坊主だった。
「父ちゃん一匹も釣れないなんてだっせぇなぁ!」
釣竿を片付けながらの彼の憎まれ口も微笑ましかった。
「今日はおまえに勝ちを譲っただけさ!」
ひねくれているのはおれ似の証拠だなと苦笑した。
合図のように
グ〜。
お腹が鳴った。
「ラーメン食べてから帰るか!母ちゃんに自慢できるな。」
あいつの頭を撫でておれは笑った。
いつまでもこんな二人でありたい。
気が付くと
ラーメンのうまそうな匂いがしてきた。