不思議な宿泊♪-3
「梓、大丈夫か?梓!」
梓の目がゆっくりと開いた。しかし…梓では無かった…
「知広さん…♪」
「桜…?大じょ…うわッ!?」
にっこりと笑った桜は俺の手をとり、ブンブンと振り回す。
「アハハハ♪凄い、凄い楽しいですね♪もう踊りたい気分です♪」
「ちょっ…さ、桜…」
「ほらほら、知広さんも笑って下さいよ♪」
そう言って無理やり俺の頬を引っ張る。
「ひ、ひはひ!はふら!ひはひ!」
「キャハハハ♪知広さん、可愛い♪ひはひって何言ってるか分かりませんよぉ♪」
「ひょっ…ちょっと…やめろって!」
こちらも無理やり桜の手を引き剥がす。そうしたら、桜はしゅん…と俯いた。
「あ…ご、ごめん…桜…痛かったか?」
「………じゃない」
「えっ…何…」
「…桜…じゃない…私」
一人称が私…つまり梢。
「ご、ごめん…梢…」
しゅんと落ち込んだ様な表情。いつものクールな梢とは違う雰囲気だ。
「うっ…うっ…」
突然、瞳いっぱいに涙を溜め出した梢。
「えっ…ちょっ…梢、どうしたんだ?」
「知広は…知広は…私のこと嫌いなんだぁ…ひっく…」
完全に酒精にやられている…桜が笑い上戸で、梢は泣き上戸なのか…
「えっ…な、何言ってんだよ梢…俺はみんな好きだって…」
「それじゃ嫌なの!私だけを見て欲しいの!知広を渡したくないの!梓にも桜にも!うっ…うぅ…ふぇぇええん」
梢は子供の様に泣きじゃくった。普段の大人っぽい表情からは想像もつかない。
「そ、そんな…」
「分かってるよぅ…ひっく…知広が…みんな好きなの…でも、私は…あ、梓みたいに…明るくないし…さ、桜みたいに優しくもない…いつも…ひっく…素直に…ひっく…な、なれなくて…可愛くない…ひっく…」
「梢だって可愛いよ!」
「嘘だぁ…知広だって…ひっく…ひっく…私のこと…ひっく…か、可愛くないって…思ってるんだぁ…」
ダメだ…完全に暗黒面に囚われてる…
「梢、しっかりしろよ!梢だって笑ったところとかすごく可愛い!俺は梢だって愛してる!」
梢を真っ直ぐに見つめ、励ましの言葉をかける。
「ほんと…に…そう思ってる?」
「ああ!」
「じゃあ…今だけは…私を…見てて…」
そう言うと梢はゆっくりとパジャマのボタンに手を伸ばし…