光の風 〈封縛篇〉後編-1
何となく「それ」は近づいてきているような気がした。聞こえもしない足音がだんだんと大きくなっている気がする。
カルサは静かに目を閉じ神経を尖らせた。自分の鼓動がやけに大きく聞こえる。
誰かが笑った気がした。
「衛兵!入り口から離れろ!」
カルサの声に反応し、衛兵が離れようとした瞬間に入り口付近が大きな爆発音と共に崩壊した。
「きゃああっ!」
「衛兵動けるなら退避しろ!サルス、後ろに下がれ!動けるものはこの部屋から出ろ!」
とっさにリュナをかばい、それでも視線は入り口付近から離さない。目で被害状況を確認し、指示をだす。
カルサには一瞬で相手の厄介さが分かった。まともに相手をすれば確実に命はない。ナタルの命も、貴未の命も、侵入者がここにいる時点で怪しかった。
サルスにも今までの暗殺者やら侵入者とは明らかにレベルが違うことがわかる。カルサの命を守りぬくすべが見つからない。
充満する土煙が晴れはじめ、侵入者らしき人物のシルエットが浮かんだ。
「見つけたぞ…光の力を持つ王よ…。」
低く響いた声は不気味ささえ持ち合わせていた。カルサはゆっくりと立ち上がり一歩前に出てリュナを後ろにやる。
リュナが怯えている、両腕で自分の体を抱きしめ全てのものから身を守るように縮まり震えていた。その怯え方は尋常じゃない。
しかしカルサには分かっていた、何故姿を見ずに声だけでここまでリュナが反応するのか。
「光の力を持つ王よ、その栄光は未だ健在というわけか。」
やがて彼の輪郭がはっきりして顔を確認することができた。兵士の言う通り、赤い目をした男。カルサの金色の目とは対称的だった。
「何者だ!ここは王座の間、狼藉は死に値するぞ!」
「サルス、下がれ!相手が悪い!」
サルスの言葉に真っ先に反応したカルサは即座に制した。侵入者はゆっくり視線をサルスに動かすと、笑みを浮かべる。
「貴様も大変だな。」
そういうと侵入者は一歩ずつ近づき始めた。一歩、また一歩進むにつれ速度は上がる。やがて走りながら剣を抜きカルサに斬りかかった。
「リュナを!!」
その思いをだれにあてたのか、カルサは手の中に剣を召喚し振り落とされる剣を受けた。その間に兵士は怯えて動かないリュナをその場から遠ざける。
「たまき…ではないな。貴様も…何か違う…?」
「あたり…前だ!!」
侵入者の剣を勢い良くはじき、その瞬間に雷の柱を降らせ攻撃をした。侵入者は軽くかわし後方に飛んでみせる。その軽やかさに誰もが強さを痛感した。