光の風 〈封縛篇〉後編-7
時が近づいていた。
力と力の反作用で結界に亀裂が入る。
「いくぞ!」
亀裂をめがけて千羅と瑛琳は同時に攻撃し、見事結界を破り光が乱れ溢れる中を走りだした。向かう所はただひとつ!
散らばる瓦礫を横切って王座の間を目指す。強い力に押されて道は思うようには開かれなかった。それは進めば進むほどに抵抗が高まってゆく。
力強く神々しい光、吹き飛ばされないように必死で進む。眩しすぎて目を開けるのが困難だった。
激しい玲蘭華とヴィアルアイの力のぶつかり合い、侵入者を亜空間に閉じ込めようとする玲蘭華とそれを阻止するヴィアルアイとロワーヌ。玲蘭華を助けるようにジンロも手を貸していた。
何という役者が揃っているんだ。あまりの面子に信じられなくて二人の足は止まりそうになった。それはまるで太古の因縁が現在に甦ったような感覚。
「何をしている千羅!早くカルサを!!」
ジンロの声に促され光溢れる中、目を凝らし必死にカルサを探す。いない、いない、どれだけ辺りを見回しても千羅の目にカルサの姿が映らない。
「千羅!あそこ!!」
瑛琳の指し示す方向に何か物影があった。それを確認した瞬間血の気の引く音が全身に響き渡る。
「カルサ!!?」
胸に突き刺さった剣、そんなカルサの姿は二人の平常心をなくすには十分だった。無我夢中でカルサのもとへ駆け寄る。
バシィン!
あまりに強い力と力の干渉に空間にヒビが入り始めた。王座の間にいくつも亀裂が刻まれていく。その場にいたサルスや兵士たちの悲鳴が聞こえてくる。
「瑛琳、頼む!」
「ええ、カルサを!」
固まり集まっているサルスたちの元へ瑛琳は向かった。柱に壁に床に、どんどん亀裂が入ってゆく。
その勢いは強く千羅の背中をかすめた。
「千羅っ!」
「大丈夫だ!サルスたちを頼む!」
瑛琳は前を向きサルスたちの方へと進んでゆく。幸い光の波は追い風となり予想以上に速く辿り着いた。体に傷が付くのも構わずに全神経を集中させ、結界を作る。
さっきまでの強風が止み突然の変化にサルスは恐る恐る顔を上げた。目の前には見覚えのない女性の後ろ姿、彼女の周りには淡い光が溢れている。
「きみは…?」
「周りを見る余裕ができたなら、もっと固まるように兵士に言ってちょうだい!小さい方が強度もあがる!」
彼女の言葉を聞き初めて自分が結界の中にいる事を知った。急いで小さく固まるように兵士達に伝える。