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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈封縛篇〉後編-5

「ジンロ!!お願い!」

水晶玉を受け止めたジンロはカルサのもとに走り始める。

「ジンロ!」

玲蘭華ではない女の声に反応したジンロは間一髪で上空から振り落とされた剣をかわし後方に飛んだ。

カルサの前に立ち、剣をかまえジンロの行く手を阻む女性の姿をジンロと玲蘭華は確認した。黒く長いウェーブのかかった髪をなびかせ、冷たい表情で立ちはだかる。

「ロワーヌ…沙更陣はどうした!?」

「想像くらいつくでしょう?それを渡しなさい。」

次々と見知らぬ人物が増え、ものすごい速さで変わってゆく展開にサルスたちはただ見ていることしかできなかった。何かあった時の為に傍にラファルが待機していることを彼らは知らない。

今の状況の不利さに玲蘭華とジンロは焦っていた。何とかしてカルサとリュナをここから避難させなければ、全てが終わってしまう。

急に気配に気付き後ろを振り返った瞬間、玲蘭華は手首を捕まれ力強く引っ張られた。腕の痛みに思わず悲鳴がでる。

「久しぶりだな、玲蘭華。」

「ヴィアル…ッ!」

水に濡れた髪をかきあげながら微笑む瞳はどこまでも冷たい赤色だった。何とかしなければいけない。

この二人を何とかしなければいけない。





「くそっ!!何しても開きゃしねぇ!!」

王座の間に続く廊下の途中ですでに千羅は足止めをくらっていた。いくら剣で叩きつけても地の魔法を使っても結界はものともしない。

「くそっ!!」

やけくそに体当たりをしても何も変わらなかった。無色透明な結界を相手に焦りだけが募る。

入り口付近の瓦礫の残骸と壁に空いた穴。何かあったと一目で解る光景に焦らないはずがない。これだけ強い結界をはれる人物など心当たりが一つしかなかった。

「ヴィアルアイッ!」

怒り任せに両手で結界を叩く。何も変わらないと分かっていても何かせずにはいられなかった。

異変を感じ城に戻ってきてからずっとこの場で立往生している。一瞬現れたジンロには、何とか突破口を作る。ナルを連れてこい、とだけ言われていた。

「皇子…っ!カルサッ!」

気を持ち直し、もう一度剣で結界を壊そうと斬りかかる。もどかしい気持ちを力に変えてひたすら結界にぶつけた。


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