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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・9》-1

朝…
澄み渡る空に清かな光が射し、その中に薄い雲がちらほらと浮かんでいる。
まだ時頃は早く、人影は俺と…その先の角に一人…

「おはよう、澪」
「おはようございます、鬱輪さん♪」

ヨミ高へと向かう道の途中、暖かな笑みと共に澪が俺を待ってくれていた。

「行こうか」
「はい」


まずは、近況報告をしよう。
あの事件の翌日、佐久間親父の汚職、談合など情報が新聞社に匿名で、しかも証拠付きで送られていたそうだ。それに伴い、佐久間竜二は転校。幸いなのか、どうか分からないが俺には何のお咎めも無かった。ちなみに、それからしばらくの間、七之丞は何故か羽振りが良かった。何か裏で関わっている様だ…写真がどうとか…まあ、関わりたくないので無視しているが…

そして、俺と澪は付き合いだした。未だに澪が俺に脅されているとか言う教師や、生徒もいるが、澪も俺も極力気にしないようにすることにした。
俺も澪を傷つけないために少しずつだが、周りと溶け込むために努力している…そのためにはあのバカを排除しなくてはならないだろう………前途多難だ…

「鬱輪ァ、ヒ〜メ〜♪」

噂のバカが来やがった…

「おはよ!」
「お、おはようございます…」
「………」
「挨拶しろやァ…まあ、それにしても朝からイチャイチャと見せつけてくれるなァ!フラれたわいに対する当てつけか!」
「嫉妬は醜いぞ」
「わいかて…わいかて…女の子とイチャイチャしたいんやァ!ラブラブして、ベタベタして、XXXしたいんやァ…それなのに…それなのに…うぇーん…(泣)…」
「自分で(泣)とか言うな…」

そんなやり取りを見ながらヒメはクスッと笑った。

「まあ、わいは先行くで。『好きだ』『どのくらい好き?』『世界の誰よりも♪』『私も♪』みたいな、甘ったるい、ベッタベタの会話しながら登校しろや!…うわぁーん!!」

嫉み、妬みを振り撒きながら七之丞は腕で目を押さえ、学校へ向かって駆けて行った。

「日増しにイタい人間になってくな、アイツは…」

去っていく七之丞の背中を見ながらポツリと呟いた。
その時、突然俺の腕に触れるものが…

「ひ、姫野!」

姫野の両腕がしっかりと俺の腕を抱き締めていた。いきなりの攻撃に俺のダメージも大きい…

「い、いきなりは…」

心臓がバクバクと速度を上げ始めた。

「………」
「姫野…?」

姫野は腕を抱き締めたまま俯いている…

「……澪…?」

呼び方を変えて、恐る恐る尋ねてみた…


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