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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・8》-8

「ご、ごめんなさい…痛かったですか!?」
「いや、お前は謝るな…悪かった…本当に…」

そう言って姫野を抱き締めた。姫野も俺の身体をその小さな腕で掴む…

「姫野…また…一緒にいてもいいか…?いや…一緒にいたい…いさせてくれ…」
「はい…鬱輪さん…」

ポロポロと雫が落ちる。何の感情だか分からない…嬉しさなのか…なんなのか…

※※※

「…ッ…ゥ…!何だ…これは?」

痛みと共に目覚めた佐久間とその仲間達は今、自分達がおかれている状況をよく把握出来なかった。

「何で…縛られてるんだ?」

全員が後ろ手で縛られており、さらに8人全員が一本の太いロープでまとめられていた。

「おっ!やっと起きたか!」

七之丞が場にそぐわぬ明るい声を上げた。その口では煙草が紫煙を上げて燃えている。

「テメェ、何してんだよ!?」
「ふざけんな!」
「まあまあ、もちっと静かに…」

大仰な動作で手を振り、一同を宥めようとした。
「早く解けコラァ!」
「ぶっ殺すぞ!」

その罵声の嵐に七之丞はポリポリと面倒臭そうに頭を掻きながら、男達に近付いていき…

───ドスッ…

「…静かにせえ、ゆーとるやろ」

先程とは一転してドスの効いた声。そして、佐久間竜二の足の数ミリ横でナイフが畳を貫いていた。
場が冷気を帯びる。誰も口を開こうとしない。

「そうそう♪人が喋るときは黙る。君らもおとんやおかんに教えてもろたやろ?」

そういうと、ナイフを引き抜き、クルンッと手の中で回す。

「で、黙ったええ子達にはご褒美や♪」

ナイフをしまうと傍らに置いてあった三本の茶色のビンの内の一本を持ち、栓を開けた。
中身の液体が揺れる。その液体を男達に向け、振りかける。
男達は一瞬、固まったあと、その嗅ぎなれた匂いに呆然とした。

「酒…?」
「ピンポーン♪君らの大好きなお酒、しかもアルコール度数がかなり高いやつや♪」

ニタニタと笑いながら二本目のビンを開け、同じ様に男達にかけていく。8人全員がびしょ濡れになり、鼻が強い臭いに麻痺する。
そして、三本目。今度は半分を男達にかけ、もう半分は線を引く様に畳に零していく。

「な、何してんだ…」

誰かがそう尋ねた。しかし七之丞はその問いに答えず、液体の筋の先に立っている。


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