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サボり魔と委員長の屋上
【青春 恋愛小説】

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サボり魔と委員長の朝-1

あぁ、もう!!
あのボケは朝っぱらからウチに何させとるんや!?
怒りに任せて、階段を駆け上る。二段飛ばしで。
運動ははっきり言えば苦手な方やけど、今のウチは怒りで脚力が限界突破してる。今なら『階段登り』で世界記録も出せそうやな。
そんな事を考えてる内に屋上に到着。さて、あんのボケ……グースカ寝とったら頭蓋骨陥没させたるぐらい踏んだる!

『あのボケ』もとい、ウチの秘密の彼氏である衣笠広見は、一言で言って変人や。
朝早く、それこそ教師や用務員のおじさんが来る前から学校に登校し、いつの間にやら複製した鍵を使って昇降口を開けて入り込み、その後は日がなほとんどを屋上で過ごす。もうみんな慣れて、何も言わへん。
または昼休みから来て、午後いっぱいを屋上で過ごす。一日中教室にいた事すら数えなくてもえぇぐらいしかない。
のくせして、成績は我が校始まって以来の秀才やと言うんやから、詐欺やね。詐欺。 まぁ、それぐらいやからなんとか許されてるんやろ。一応、最低限の授業には出てるし。
公立やったら、何回留年しなあかんかわからへんけど。
そんなサボリ魔広見君のルックスは線の細い優男で、いっつも顔には笑顔が張り付いてる。初めてみた時は、その笑顔が仮面に見えた。
ウチには一発でわかったね。ウチも『委員長』という仮面を被ってる。仮面を被ってる人間は他の仮面を被ってる人間に敏感なんや。
まぁ、いろんな事があって、ウチらは付き合い始めた訳やけど……後悔してますね、ちょっとだけやけど。

酷使した足が重い。ほんまはあいつ、ウチが憎いんとちゃうか。何時も何時も登らせて。
まぁ、そんな事あらへんやろ。あのボケはウチにゾッコンやさかい(笑)。
意外にも、扉を開けた先にいたのは起きてる広見やった。何やら柵に寄っ掛かって、景色を見てる。
「うっわ、珍しいもんみた」
「……起きてる僕は珍獣かい?」
ウチが居るのがわかってたように、微笑みながら振り向く。うぅ、やっぱちょっとえぇ男や。
「何時も寝てるってゆう自覚は有るみたいやね」
「まぁね。で、何の用かな?」
こんのボケは………!!
やっぱやな男や。
「白々しいんとちゃいますか。ウチはあんたの目覚ましやないんやで!?どうせなら、寝とき!!ライダーキックかまして起こしたるから!!!」
目を見開いた広見がこっちを見る。
「も、もちろん君は僕の恋人だから目覚ましではないよ。……ご機嫌斜めだねぇ。危うく僕は永遠の眠りにつかされるところだった訳か」
「ふん!!……で、何で珍しく起きとったん?と言うか、いつから居んの、あんたは」
「夜明け前からかな。日の出が見たくってね」
夜明け前って、あんた………。
「寒ぅなってきたのに、そんな朝早くからこんなとこいるなんて……あほ?」
もう11月の初めやというのに。やっぱり、広見はようわからん思考回路を搭載してる。日の出が終わってから、だいぶ経ってる。今は8時46分や。
「あほかもね。……寒いから見に来たんだ。そろそろ朝早くからここに居るのが辛くなってきてね。しばらくは見れないだろうから、見納めしといたんだよ」
とても綺麗だった、と広見は綺麗に微笑んだ。ウチにはそれが日の出みたいに見えた。いつやったか、一緒にここで見た日の出みたいやった。
何時も被ってる人好きされる笑顔やなくて、ウチだけに見せてくれる笑顔。思わず赤面もんやね。
「おや、赤くなっちゃって。今度から何かあった時は微笑むとしよう」
「おあいにく様。ウチは打算のある笑顔で赤面するほど世間知らずちゃう。あんたの裏のある笑顔なんて、日常的に見てるからねぇ」
広見は何時も裏のある笑顔で心を閉めてる。自分の深い所に踏み込まれないように。
「そうだね。薫はそこまで純じゃないよね…………痛っ!!!」
臑を蹴った。
こいつはほんまに……。


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