秘中花〜初花〜-1
今夜でお仕舞いだ。
何年も何年も待ち焦がれてきた―――…。
気が狂うほど。
気が遠くなるほど。
君の気持ちを利用しながらも躱してきた。
「いつか、いつか…ね」
数多の色欲に塗れて、汚れて、堕ちて……
手垢だらけの俺を受容させるには、君は幼く無邪気すぎた。だから、だから……
―――16まで待った。
午前0時すぎ。
梨園名門・美羽屋こと片山家の屋敷外れに、20坪ほどの蔵がある。
そこには歌舞伎で使われる衣裳や小道具などが納めており、8畳の座敷には絡み合う男女がふたり。
「亜蓮!?」
片山凛子(かたやま・りんこ)は驚愕の表情で、自分を伸す影を見上げた。
「…誕生日祝いだ…」
亜蓮は微笑みながら、手際よく凛子の着物の帯を解く。
「…えっ?、はぁっ…!」
戸惑う間もなく仰向けられ、凛子はされるがままに縛られた。肌を傷めにくい、絹でできた紅い縄紐でだ。
両手首は頭上へ座敷の一隅柱に、開脚された両膝は両肘へと左右に括られる。
最後に長襦袢ごと着物の腰紐を解かれ、慎ましく隠れた白い肌が露になった。
「……綺麗だ…」
天井付近の明かり取りから降り注ぐ月光に浮かんだ凛子は、
―――白と赤とで、色鮮やかに開花した…。
若月亜蓮(わかつき・あれん)、観水流・シテ方能楽師。幼少より類い稀なる美貌と舞の才を兼ね備え、現在24歳。
凛子の兄の親友で、歌舞伎と能…伝統芸能同士の付き合いはそのまま片想い歴となり10年。
好きで好きで、何度も子供扱いされてきた。
その亜蓮に凌辱される。
(…寧ろ本望だわ……)
長年秘めてきた切なさが込み上げ、膣がキュンと鳴いた。
「んあぁ……」
ひとり蕩けてゆく凛子を見つめながら、亜蓮はスーツのネクタイを緩めた。
「嫌か?」
今更わかっている答えを、あえて問うてみる。
「…亜蓮になら…何されてもいい…」
恥態を晒してもなお恍惚する凛子に、亜蓮はまた微笑む。
そして、口づけ。
優しく…やがて堰を切ったかのような激情で、舌を強く深く搦める。
「…んっ…むぅ…っ!…」
慣れない苦しさに、唾液がこぼれる。
肢体をまさぐられるたびに、手足の紐が軋む。
「っあん、あっ、あ、亜蓮っ…!」
つんと起きた乳首は、手淫の痼り癖もなく柔らか。
親指と人差し指で摘んだ亜蓮は、きりきりと弄っては離し甘噛む。
「っく、…ふあぁぁんっ」
鋭い快感が駆け抜け、男を知らない秘唇が閉じたまま、くちゅ、と水音を立てた。
それを指で割り広げる亜蓮。
「っはぁ…」
「ふふ、可愛いもんだ。ほら、もうぐしょ濡れ濡れ」
「やっ…」
羞恥で俯く凛子に構わず、一本指を押し入れる。
「いっ!?…っ、うぅ…」
初めての異物感で引きつる凛子に、亜蓮は言う。
「力を抜け。じきに慣れる」
ゆっくりと指を抽挿しながら、肉芽を舌で嬲る。
「あっ、あ―――!」
凛子のふくらはぎが跳ね、爪先が丸まる。