『you』-1
また始まったわ。
アイツとの、今日が。
『you』
あちこちで飛び交う、朝のご挨拶。
アタシは、これがあんまり好きじゃない。
なんか…疲れる、から。
でも、挨拶しないわけでもない。
友達は好きだから。
「キリぃぃ!!おはよっ!」
「おはよ、キョン。」
キョン…矢代 今日[やしろ きょう]。アタシの、友達。真っ茶な髪の毛をツインテールにした、ハイテンションな子。
「キョン、朝チョー美形見たぁ!きゃんっ!!」
「ふぅ〜ん…。」
靴を履き替えながら、適当に返事をする。
キョンがイケメンで興奮するのは、日常茶飯事だもの。
「もうね、心臓ドッキンドッキン!また会いたぁぁぁい!」
「おいっす、騎里、キョン。騒がしいな。」
「さびろー、おはよ。」
「さびろー、聞いて聞いて聞いてぇ!キョンね、朝…あ、華チャンおはよぉっ!」
「おはよー…あ、騎里、髪切った?」
「うん、ちょっとだけ……良く分かったね、華香?」
「ふふっ。」
やり取りが終わると、アタシを覗き込む2人。
「え〜?どこぉ?」
「あんま変わんなくねぇか?」
さびろーは、男友達。土佐 叉介[とさ さすけ]。バスケ部のキャプテン。
華香は、どんな小さい事もすぐ見抜くお嬢さん。相葉 華香[あいば はなか]。
そんな、真っ黒で真っ直ぐで綺麗な髪質の彼女は、ふふっと笑って、
「前髪が、3mm短くなってるもの。」
と言うと、傘を置きに行った。
…細かすぎる…。
ハっ、と我に返ったように、さびろーはアタシに話しかけてきた。
「そういや、ダンナはどうした?」
「今日は、一緒じゃないから分かんないや。」
「ゆーち、カゼかなぁ?」
心配そうに、キョン。
「バカはカゼ引かねぇから大丈「きぃりぃぃぃぃぃ!!!」
校門の方から聞こえた叫び声、みんなは不思議そうにそっちを向く。