『you』-4
ガタンッ…
「どうした?由謳。」
ゆー、立つ時は手を上げるのよ。マナーよ。てか、どうしたの?トイレなら廊下出て正面に…
「………騎里と、後ろ行きたい。」
………ひゃは?
「「おおおっっ!!」」
ざわめく教室。どよめくクラスメイト。
「別に、いいけど…。なぁ?みんな。」
「俺も。由謳の隣りヤだし。」
「俺も。」
「どーせ、後ろっつっても席2つしかないしな。」
「何だそれ!まぁ…、いい。騎里、行こ。」
頬杖してる腕を引っ張られる。
「ちょっ、待ってよ、ゆー。アタシ、後ろヤだ。」
「えっ、何で?」
拒否られて、きょとんとする由謳。
「何で…って、アンタ。」
何で後ろ行きたいんだか知らないけど、アタシ…
「アタシ、目悪いもん。」
「「…………。」」
「知らなかった…。」
って、彼女が目悪い事ぐらい覚えときなさいよ!!
……結局、一番後ろの窓際。隣りは、満面の笑みのヤツ。
「ふぅ…。」
「騎里?」
「ん?」
「見えない?」
「大丈夫よ。」
一応、気遣ってくれてるんだって事だけは知っとく。
「俺…」
机を、くっつけてくる由謳。こーゆートコ、幼くてちょっと可愛い。
ぎゅっ…
「ゆー…?」
「騎里は、左利き。俺は、右利き。だったら、授業中ずっとこーやってられんじゃん?」
にひひっ、と笑って、真っ直ぐアタシを見つめる。
「ワガママ言って、ごめんな。俺が、騎里の目になるから。」
いや、別に…そこまで悪くないんですけどね。
「やっぱ、ヤだ?」
返事しないアタシを、不安げに見つめる由謳。
クラスのみんなは、みんな前見てる。
「んん…。」
返事の代わりに、素早く唇を重ねた。
「うあ…騎里?」
真っ赤になって、うろたえる君。