「電話で、ねっ」-1
電話が掛かってきたのは、彼女が服を脱いだ直後だった。
寝室に置いてある子機を取る。
『ごめん。寝てた?』
彼の声は少し遠く、雑音が混じる。
「ううん。起きてた。そっちは…朝?」
受話器を肩ではさみ、手を回してブラを外す。
『うん。こっちは朝の8時。もうすぐ仕事だけど、声が聞きたかったから』
甘えた声で。
彼女はベッドに横になり、天井を見上げる。
『早く帰りたいな』
「早く帰ってきて」
ベッドの上で腰を上げる。下着がするりと脱げる。
『俺さ、ヤバいわ。お前のことばっか考えてる』
「どうせ、エロいことでしょ」
ふふっ、と彼女は笑う。
『…うん。…お前の声聞いたら、すごく、ヤリたくなってきた』
ささやく。遠い国にいる彼が、たかぶっているのが分かった。
「浮気したら、許さないから」
『しないよ。一人で、してるし』
唇をなめる。指先が男を求める。
結婚してニ年。年下の彼が仕事で海外に行ったのは、結婚式の半年後。それ以来一度、三日しか帰ってこれなかった。でも、もうすぐ帰国する予定だ。
『今も、俺、ひとりでしてるんだよ』
「声…、聞かせて。トオルが感じてる声、聞きたい。」
『恥ずかしいよ』
「あたしも、するから…」
彼女はコードレスの受話器を枕元に置き、ボタンを押す。
受話器のスピーカーから、彼の荒い息遣いが漏れてくる。
「トオルの声、やらしい」
『カナの声が、エッチ過ぎるんだよ』
はっ、はっ、と電話越しの息が響く。
指が彼女の胸の膨らみを確かめるように這う。その頂上で立ち止まる。
『触ってる?』
「うん…。おっぱい」
あおむけに寝ていても、彼女の胸は形を保っていた。白く静脈の浮いた肌に、一点だけ赤く頂上が立つ。
『もみたい』
「あはっ」軽く笑う。
『夢にも出てくるんだ。カナの胸。おおきくて、柔らかくて』
「前みたいに写メ撮って、送ってあげようか」
『いいよ。来週には、ほ…、本ものが見れるんだから』
「おっぱいだけしか想像してくれないの?」
指がつっと胸を降り、脇腹から腰に向かう。
彼女は脚を開く。熱くなったそこは、虚ろな空間を埋めてくれるものを待っていた。
『他にも、想像してる』
「うん…。たとえば?」
指がそこを捉えた。草むらをくすぐるように、さわさわと撫でる。
『あそこ、とか』
神経の集まった種を、指がこする。
中からじわじわと、溶けていく。
「あたしも、想像してる」
『何を?』
彼のうわずった声。見せつけるように脚を開き、いじわるな質問に答える。
「トオルの」
『どんなになってるとこ…?』
受話器に、蕩けた視線を向ける。
「きん、って固くなって、あつくなってるの。先がぬるってなって」
『どうしたいの? それ…』
彼の息が荒い。声が近い。
「口で、してあげるの…」
『…してみて』
彼女は舌を出し、唇を開いた。
口の中に水分をため、それを舌にからませる。熱い。
仔犬がミルクを舐める音。
『聞こえるよ。すごく、エッチな音』
「…うん」
ざわつく身体を、指が刺激する。
鉤のように曲がり、彼女の入り口をほぐしていく。
「あっ…あん」
『やらしい声だね』
彼女のつま先が、きゅんと曲がる。シーツの上を滑る。
指が中で蠢く。一本。二本。Vの字になって、掻き回す。