「電話で、ねっ」-3
『すげぇ…締まってる』
受話器の向こうで、彼がうめく。
「あ…、すごく、気持ちいい…」
彼女は受話器に向かってあえぐ。震える声で。
いつもなら、ここからが長い。
でも今夜は、もう、じらされたくなかった。
「ああっ…おく、奥まで、きて…」
ベッドがきしむ。
『スケベだなぁ、カナって。こんな、感じで?』
身体の中心まで、熱いものが届く。
「やぁん!」
『ほら、奥まで、ずぶずぶって』
貫かれて、自然に腰が細かく揺れてしまう。
彼女の身体の中にあるものは、それを知っている。
「ひっ、あっ! すご過ぎるぅ…」
『もっと感じさせてやるよ』
「あっ、あっ! ああっ!」
杭を打たれたように全身が震え、我慢できずに悲鳴が響いた。
『カナ、カナっ!』
「すごく、きもちいいっ!」
電話の向こうの彼の声も、もう限界だと伝えてきた。
『ああっ、出る、出ちゃうよっ!』
「はぁっ! も、だめっ、いっちゃう、いっちゃうっ!」
『ああぁっ!』
「出して、出て。いっぱい、いって…っ!」
がくん、と彼女の力が抜けた。
うつ伏せのまま、ベッドに倒れこむ。喉が乾いて、息ができない。
ひくん、ひくんと身体が痙攣している。
はぁっ、っと大きく息を吸った。
しばらく、そのまま何の音もしなかった。
やがて、受話器からかすかな衣擦れのような音がした。
彼が、彼の身体を拭いている音。
『すげぇ。いっぱい出ちゃった』
照れながら、電話の向こうで彼が笑う。
「あは…」
彼女も、笑った。
『早く帰って、カナとヤリたいな』
「やって」
電話越しに、キスの音。
「楽しみにしてるから」
受話器がにっこりと微笑んだような気がした。
『もうこっちは9時だよ。マズい。仕事行かなきゃ』
「うん。あたしも寝るね」
ほんの少しだけ、沈黙があった。
『カナ。愛してる』
一瞬、彼女は応えられなかった。
「うん。あたしも。愛してる」
そう言った時には、もう国際電話は切れていた。
裸のまま、彼女は電話をテーブルの上に置いた。
その隣に転がったバイブレーターには、うっすらとホコリが被っていた。
彼女は寝返りをうって、寄りかかった。
「悪い奥さんだね」
暖かな身体がそこにあった。
「じゃあ、何もしなきゃいいのに」
ベッドの上にあぐらをかいた男の、脚の間に顔を寄せる。
「だって、お前が誘ったんじゃないか」
彼女は、欲望を満たし、冷たくなった男のそれを、面白そうに指でつまんだ。
「ヘンなカタチしてるよね、これ」
先端に、そっとキスする。
男の味。苦くて、生の細胞の味。
「アイツ、来週帰ってくるって」
「じゃ、あと何日かしか続けられないのか」
口に男を含みながら、顔を見上げる。再び力が流れこんでくるのが分かった。
「それまでは、いっぱい、して」