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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈封縛篇〉前編-5

深く鮮やかな紅色の石、なんとなく記憶の端に見え隠れする。リュナの物ではないことは確かだった。紐は長い、手首用に作られたものではない、となると首飾りだったのだろうか?

深紅の首飾り、その言葉を口にした瞬間記憶が鮮明に思い出された。

「ジンロの首飾り…まじないがかけてある。」

守護のまじない、先程で使い果たしたのだろうか?効力が弱まっている。何とも言えない感情が湧き出てきた、ただ苦しいことは分かる。

城内に少しずつ人の気配が増えていく。避難民を受け入れる態勢は整っている、サルスに任せればいい。報告も次々と入ってくるだろう、いつまでもここにいる訳にはいかないのは分かっていた。

風のない嵐はただ雨が降るばかり、この雨を止めなければ被害が拡大する。カルサがやろうとしている事はリュナがした事と全く同じ事だった。

自然現象を支配するということは自分以上のものと戦うという事、ハイリターンは当然の結果につながる。

「結局似た者同士か。」

いつのまにかラファルがカルサの足元にきていた。全てを知り尽くされているのかもしれない、服を軽く咬み自分の方に引き寄せる。無茶な事をするなと、態度と目で訴えられているようだ。

「愚かだと思うなよ?」

それでも全てを洗い流してしまいそうなこの嵐を止めなければいけない。稀にみるこの雨は今日さえも流してしまいそうな勢いだった。ゆっくりと静かに、じりじりと刄が近づく感じに似ている。

それでもラファルは止めていた。物は語らず目で諭すよう、それはカルサの呼吸はおろか時間さえも止めてしまう強い眼差し。

 やがて耳の奥に響く声が自分の立場を思い出させる。

「ああ…オレを呼ぶ声が聞こえる。」

自分には他にやらなければいけないことがあった。王として束ねることがカルサの責任、それを思い出したのだ。

思い出したというよりかは、再認識したというべきだろう。リュナの頭を優しく撫で、身体をラファルの方に向き直した。

「リュナを頼む。」

ラファルの小さく吠えた声は任せろと聞こえた。満足そうに微笑むと立ち上がり、国王の顔をして部屋を出ていった。

城内は慌ただしさを増し、人が増えていくだけ混乱も増えていった。どうしようもない不安が小さな争いを生むこともある。

避難してきた民の集う場所。民の部屋と名付けられたその部屋は、人が一番集まり感情の動きが一番激しい場所でもあった。

カルサが民の部屋に着く頃にはすでに不安からうまれた心の乱れが争いの種になっていた。何から始まったのか分からないが、中年の男性二人がもめている。

もめているというよりか、一人が興奮してつっかかっているようだ。カルサの姿を確認した女官が慌てて駆け寄る。


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