光の風 〈封縛篇〉前編-14
「カルサもだけどリュナもこっちでは衛兵がいないんだな。なぁ、一応必要なんじゃねぇの?」
「私も提案はしたんだが…。」
「必要ないわ。この国には御剣が一人ではないもの。何かあればお互いがお互いを助ければいい。」
誰よりも穏やかで優しい声でリュナは提案をまた受け入れなかった。御剣が一人ではない、彼らは知らないがここにはカルサ、リュナ以外にも千羅や瑛琳がいる。
二人にとってそれが何よりの強みだった。
「リュナの言うとおりだな。神が兵に守られるというのも情けない話だ。」
「しかしお前は国王でもあるんだ。お前に何かあった場合、我が国では二重の痛手を負うことになる。」
サルスの言っている事はもっともだった。カルサの立場は国の統率者であり、象徴でもある。一度に2つのシンボルを失うのは国にとって辛い。
仕方ない、いつまでも心配をかけてしまうよりかは、形だけでも傍においておくのが一番の得策だろう。問題は誰にするか、そこだった。しかし。
「オレには王という立場だけで衛兵が自然とついている。言うなれば城内の兵士全てがそうなる。」
「しかしだな…。」
「現に呼べばすぐ来るだろう?」
カルサの言う事ももっともだった。今ここで声を上げれば兵士はすぐに駆け付ける。非常事態とはいえ、カルサの周りには数人の兵士はついていた。
それを考えると今更というのも頷ける。
「この話はこれまで。」
カルサの言葉に納得をせざるおえない一同は、しぶしぶ了解した。
「それより、ナタルはどうした?」
「そういや遅えな。」
出ていったきり戻りが遅いナタルを案じ始めた。しかし城内は広い、その内戻ってくるだろうと結論づけようとした瞬間。
ドーン!!
まるで地面ごと割けてしまいそうなくらい大きな雷が落ちた音が響いた。
「きゃああああ!!」
リュナや女官たちの悲鳴があがる。カルサは当たり前のようにいち早くリュナをかばっていた。両耳を押さえ体を縮めて震えている。
「リュナ、大丈夫か?」
「ええ、でもすごい音…どこかに落ちたのかしら?」
落ちたのには違いないが、それ以外の音が交じっていたことにカルサは気付いていた。雷が落ちる音と似たような音、それはおそらく爆発音。
「貴未!今の。」
「爆発音がまじってた。」
案の定、貴未は気付いていた。厳しい顔つきになり現場に向かおうと走りだした時、負傷した兵士が王座の間に辿り着いた。
「ほ、報告します!!城内に侵入者が…っ!」
言葉の途中で兵士は急に膝から崩れ落ちた。近くにいた兵士が手を貸す為に駆け寄ったが、あまりの傷の深さに女官を呼んだ。