ふたり【お泊まり】〜「ユキ、誰が好きなの!?」〜-1
「お兄ちゃん、お布団持ってきてないでしょ?
じゃあ、今日は一緒に寝ようね。」
「え"…」
遊輝はチラッとあや子を見る。
「当たり前だろ!?ガキ共はガキ共で一緒に寝るんだよ!」
「――うちには必要最低限の物しか置いてないからね〜。
布団かぶらないと風邪ひいちゃうし。
…ユキ、今日はあかねと一緒に寝てね?」
「やった〜!お兄ちゃんと“いちやをともにする"んだ〜!」
……おいおい、なんか凄いこと言ってるよ。
絶対、意味分かってねぇな……
あぁ"、困った…。
まさかこの家には余分な布団が無いとは……。
…家の鍵は薫が持っていったし…
――待てよ…、
「そうだ!エリカとあかねが一緒に寝ればいいじゃん!」
「「・・・・・」」
……え?……なに、この沈黙……
「それでなに?ユキはあたしのベッドでひとりで寝るつもりなの?」
――や、ヤバイ!
マンガみたいに“怒怒怒怒怒怒ッ"って音が聞こえるぞ……!
「すす、すみませんん〜!前言撤回ぃ〜!」
ふたり【お泊まり】
今日から3日間、俺はこの斎藤家に泊まることになった。
薫が社員旅行に参加したからだ。(注:薫は遊輝の母)
…なんだか、騒がしい3日間になりそうだ。
「ねぇ、ユキ。
この子の名前がなんで『ユキチ』になったのか知りたくない?」
……随分と楽しそうだな、エリカ。
そんな笑顔で言われたら聞きたくなるに決まってる。