パラレルボーイ-1
「マキくん次の問題」
「I got up(earlier )than…?ですか?」
「正解。」
クチッ…
「比較級のer-thanの関係ね。次は?」
「…He is the tallest (of)all the boys…で?です…。」
「そうね。括弧以下が単数なら?」
チュ…クチ…
「い…inが入ります。」
「いいコ。」
「あっ…」
ー睫震わせて。目…潤んでる。ー
「せんせっ…」
伏し目がちな顔は林檎の様に紅く、少年の興奮を如実に表している。
金属のフレームに微笑を隠して手を止める。
「比較文法は上出来よ。先週渡した表は覚えてきたわね。」
「はい…」
「どうしたの?」
「あの…学校の鞄に入ってるので…」
そういって少年…
―牧―
はベッドに置かれた真新しい鞄を指し示した。
「早く取ってきなさい。」
女は牧の方を向きもせずに殊更冷たく続ける。
「何してるの。」
言えど立てぬのは知っている。
右手にテキストを持ち、開いた左手で永遠と牧をいたぶって居るのだから。
「あの…センセイ…」
無言で両手に持っていたモノを離すと、牧がそろりと学習机を立つ。
チャックを開けたまま歩く牧はどうしようもなく滑稽で…愛くるしい。
その姿を愛でながら、タイトスカートに揃えた上着を脱ぎ、ブラウスの釦を上から3つ外す。
牧は鞄の中から紙という紙を引っ張り出していた。
「鞄はちゃんと整頓しなさい。」
目前に迫ると、牧が驚いた様な表情を見せる。
ーあっ…ー
それらしき紙を手に何か言おうとするが、有無をいわさず深くくわえ込む。
素早くベルトを取り去りながら甘噛みした途端、細い腰が跳ねると共に咥内で硬さを増す。
ゆっくりと口を放し、腰に手を掛けやや長い睫に縁取られた目を見ると、予定調和の様に体を反らせ、腰を浮かべる。