投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

コタツ蜜柑。
【その他 その他小説】

コタツ蜜柑。の最初へ コタツ蜜柑。 0 コタツ蜜柑。 2 コタツ蜜柑。の最後へ

コタツ蜜柑。-1

コタツが大好き。 

猫もそう。 
暖かいから。 

冬はなんにもしないで、コタツでぬくぬく暖まる。 
おれの最高の一時だ。 

そして定番。 

それは 

蜜柑。 

コタツの上にはカゴに入った黄色い丸が並んでいる。
無造作に並んでいる。  
何も考えずに手をのばす。 
黄色いそれに指先が当たった。 

冷たい外殻がまたおれの心を温かくする。 

指先で転がしながらその丸い物体を掴む。 

目の前まで持ってきて匂いを嗅いだ。 

柑橘独特のあの香り。 

テレビもついていない、この静かな和室でおれはそれを食べようとする。

この静けさが好きだ。
コタツの中では猫が寝返りをうっている。

皮を抜こうと少し力を入れた。 

今日はいつもと違った。

「いたい!」 

あろうことか蜜柑が痛がって声をあげた。 

おれに食べられることを拒絶するように。

この予想外の展開におれはしばらく唖然としていた。我にかえり、 
まじまじとその蜜柑を観察してみた。 

従来ならば痛いなどと声をあげるはずもない。 

これは一体どうしたことか。 

この蜜柑は確かに変わっていた。 

ヘタは彼の髪のように見え、 
球体の身体には確かに二つの目玉がついていた。 

おれは思わず叫び声。 

「びっくりしたなぁ」 

冷静に蜜柑は言う。 

「キミは蜜柑ではないのか?」 

おれのとんちんかんな質問にこの蜜柑は応えた。 

「蜜柑だよ。」 

おれは苦笑いしながら 
「ならば、おれに食べられるのが筋だろう。
なぜならキミは蜜柑だから。」

蜜柑は少し困った顔をしてつぶやいた。 
「それは確かにその通りだけど、それなら抵抗しない蜜柑を食べたらいいんじゃない?」 

抵抗しない蜜柑…… 

むしろ蜜柑に抵抗されたのは初めてなんですが。 


コタツ蜜柑。の最初へ コタツ蜜柑。 0 コタツ蜜柑。 2 コタツ蜜柑。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前