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コタツ蜜柑。
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コタツ蜜柑。-2

「何故キミは食べられることを拒むんだ?」 

おとなしく身を引けばよかったものの、好奇心がまたおれから可笑しな質問を産み落とした。 

「それはまだまだ生きたいからだよ。
キミに食べられてしまったら、もうこの世界を楽しめないじゃん」 

蜜柑が世界を愉しむ。 
など考えたこともなかった。 

殺風景なこの部屋にアクセントをつけて、ただおれの食糧となるのがこの蜜柑を含む蜜柑達の運命だとおれは決め付けていたから。 

しかし確かに蜜柑にも生き方がある。 
主張がある。 
人生がある。 

蜜柑の言い分もあながち筋違いではない気もした。 

しかしおれは気付いてしまった。 

「だけどキミは生まれた樹からもぎ取られてしまっている。
キミの命もあと僅かばかりではないのか?
放っておくとしてもキミはガサガサに乾燥してひからびてしまうのではないのか?
ならばいっそキミのその儚い夢や希望を捨て去ってここでおいしく食べられてもいいのではないか?」 

蜜柑は即答した。 
「なら、キミは自分を今すぐに捨てられる?
キミの意見は人間の高慢じゃないのかな?」 

おれは返答に困り、 
コタツの猫のお腹あたりを足でさすってみた。 

コイツは夢の世界を気持ち良く泳いでいるようだ。 

「おれはおれの人生を屑のようにポイと捨てられない。」 

これが苦悩のなか浮かんだおれの答えの限界だった。 

「なら、キミが僕を食べるのはやめてね!」 

蜜柑はさっと起き上がり、 
お辞儀をして窓から外へテクテクと歩いて消えた。 

不思議なこともあったもんだ。 

これから蜜柑を食べる時は用心しよう。 

それからおれは蜜柑のことは忘れようとコタツに首まで埋めて眠りについた。 

あの蜜柑は今ごろ何処へたどり着いたのだろう? 

あの蜜柑はなにを求めて生きていくのだろう。 

おれは微睡むこの暖かい空間にただ夢の世界に墜ちていった。 

この世界にこの中の猫もいるのかと思うと 
フフンと笑ってしまった。


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