冬の花火。-2
僕の手はきつく握られたアナタの感触が、暖かさが。
痛いくらいに伝わってきた。
暖かかった。
この花びらに似た切なさが胸に込み上げた。
一つ一つの花火をまぶたに焼き付けるように目を大きく見開いた。
ふたりで土手に腰掛けた。
あの秋空に引かれたヒコーキ雲のような線が僕らの間にもあるってことが痛いくらいわかった。
わかっていた。
アナタは旅立つ。
そして糸はプチンと切れてしまうのを僕はただ待つしかできないのか。
最後の花火は
銀色…ぃや確か白だったかな。
小さな小さな花びらだった。
この花に付けられた名前はSnowtime
ただ一輪、凛と咲いた。
はらはらと火花を黒いキャンパスに広げながら静かに消えていった。
アナタみたいな花火。
何も残さずに自然に消えてしまったから。
「いまの花火が一番よかったわ。」
今思えばアナタも同じ気持ちで夜空を眺めていたのかもしれない。
帰り道。
手をつないだまま帰る。
つながる二つの影。
空からは深々と白の花びらが舞う。
さっきの最後の一輪が空から僕らを包むように。
僕の頬に花びらは溶けて滲んだ。
雪だよ。
って言ったけど
本当は涙だったんだ。
雪がうまく隠してくれたのは涙だけじゃなくて
僕の気持ち。
僕は手を振って別れた。
帰り道。
駆け足で帰る一人の道。
今のこの道の続きを僕は一人歩いている。
あの日言えなかった言葉も感情も。
また今年のあの花びらが包んでくれるだろう。
これからも交わることはないだろう。
でも強く生きていかないと。
寒い夜に咲いたあの花火のように。