幻を想う、その行方
〜黒の世界〜-2
やがて背にした光を失い、己が真の闇に包まれた事に気付く。
光も無ければ音も無い。
視界を奪われた冷たい空間。
そして、いつの間にか手探りの壁さえも失った。
手に触れるものすら無い状況。
「なんだ!?ここは…宇宙なのか」
挙げ句の果てには己が大地に足を立てている感覚までも失ってしまった。
男は孤独に墜ちた。
男は意識を手放した。
果てしなく広がる黒の世界に、奈落の底ほど低い声が重く静かに響いてくる。
「哀れ人間よ。闇の本当の恐ろしさを知らずして侵入してくるとは…」
それは存在するのか。
「こんな所に来なければ生を落とさずに済んだものを…」
それが存在するならば、原因は何なのか。
「だがその御蔭で私はこうして生きられる…」
なぜそれはこの世に舞い降りたのか。
「人間の魂は格別に美味い…」
それと対を成すものは何なのか。
「私はこのような人間がおるから生きられる。そして、私に近づけるのはこのような人間のみ…」
それは確かに存在する。