続・高崎竜彦の悩み 〜降り懸かる災厄〜-1
あ〜……どうも、高崎竜彦です。
作者がとんでもない場所で脳ミソにネタを降臨させたため、問答無用で……ま・た!引きずり出されてしまいました。
まあ……仕事中よりかは、マシか…………心情を何もかもオープンにしなきゃならない主役なんて、大っ嫌いじゃー!!
と、叫んだ所で主役を張らされる事に変わりはない訳で……はぁ、仕方ない。いきますか。
某月某日、定休日の午後。
我が家のポストに投げ込まれたタウン誌が、平穏をしっちゃかめっちゃかに掻き回してくれやがった。
この辺全域に無料配布されるこのタウン誌……当然ながら俺も名前は知っているし、いちおう隅から隅まで記事には目を通してる。
というより、少しばかり前に『ラ・フォンテーヌ』がここの取材を受けたんだ。
今号にその取材が載る、と言われてこのタウン誌の配布を楽しみにしてた訳だが……少なくとも俺は、一面にはオーナーが作る『おうちで簡単!本格美味フレンチ!』とか題した特集記事を組むと聞いていた。
ところがどっこいまあびっくり。
いざ我が家にきたタウン誌を見た俺は、口から心臓どころか肺腑まで飛び出るかと思ったね。
いや、ほんっとにたまげた。
一面の記事が俺の顔のアップと共に、『イケメンパティシエが作る!おうちで簡単本格美味スイーツ三種!』に摺り替わってたんだから。
いや確かにさ、俺もおやつレシピの取材を受けてたが……それは三面辺りに載っけると聞いてたんだよな。
普通、驚くだろ?
当然、俺も驚いた。
「何じゃこらあっ!?」
タウン誌を持ったまんまで叫んだ俺だったが……二回目の叫びを上げるより前に、やるべき事がある。
気を取り直した俺はタウン誌を引っ掴んだまま、自室に駆け込んだ。
卓上ホルダーに納まっていた携帯を引ったくるようにして取り上げると、目にも留まらぬ速さでタウン誌の編集部にいるはずの人物を呼び出す。
取材があった時、この編集者と電話番号を交換していたんだ。
それがこういう形で役に立つとはね!全く!
「はい、尾山です」
コール音が三度も鳴らないうちに、彼女が電話に出た。
「高崎です!」
礼儀も常識もない噛み付きそうな声を出すと、電話向こうの相手は引き攣った声を上げた。
「あぁ……」
「とりあえずあの一面、どういうつもりか説明していただきましょうか!?」
「あ、あのですね……電話でっていうのも何ですし、ちょっとお話しませんか?」
あ!?
「高崎さんのご都合のいい時で構いませんから」
……いいだろう。どういうつもりでこんな記事を掲載しやがったか、たあっぷり聞かせて貰おうじゃないか。
翌日。
開店前からレストランがうるさい。
「ひひっ……は、腹……腹苦ひ〜!」
「黙れ、宮子」
ランチ用デザートの準備をしながら、俺は奴をギロリと睨み付けた。
出勤途中は何とか真面目くさった顔を保っていたらしいが、仕事場まで来た途端にこのザマだ。
「ひひひっ……!」
腹膜が痙攣でも起こしてんのか?
「ま、まままっ……」
宮子が、笑いながら言葉を吐き出した。
「待山さんにっ……ぐははははっ……フ、フォロー……しとけっ……ぶははははっ……」
……あ゛。
「そのつもりだから、いい加減笑いを止めろ。このダぁホ」
俺は思わず、宮子の頭をチョコレートのテンパリング(温度調整)に使うプレートでどつき回してやろうかと思った。
ちなみにこれ、大理石製。
でかくて重くて、殴られたら痛い……いや、頭蓋骨が陥没するかも知れない。
こんなモノで頭をイワされたらろくでもない事になるのは理解したようで、宮子は笑い転げながら厨房を後にした。
ったく……!