投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

赤い鈴〜一般的解釈より〜
【二次創作 恋愛小説】

赤い鈴〜一般的解釈より〜の最初へ 赤い鈴〜一般的解釈より〜 6 赤い鈴〜一般的解釈より〜 8 赤い鈴〜一般的解釈より〜の最後へ

赤い鈴〜一般的解釈より〜-7

 ああ、指を絡めることも出来るではないか
 これが本物の君でなくて他になんと言えようか

 香りも、体温も、こんなにまざまざと。

名前を呼ぶ。
微笑んでくれる。
名前を呼び返してくれる。

 でもどうして?
 唇は動いているのに音がない……


「お嬢様!!」

ガチャ!という食器が激しくぶつかり合う音と共に、突き飛ばされそうな勢いで侍女が駆け寄ってきた。

「どうしたの?今は夫婦の逢瀬の時間よ?邪魔しないで」
「いいえ、そちらには、どなたもいらっしゃいません……」

 なんで声が震えているんだろう?

「どうして?ほら、手を取ることも出来るわ」

そっと手を伸ばす。
すると、彼はすっと一歩下がってしまった。

「ああ、逃げないで……」

体を起こし、彼を追いかけて手を更に遠くにのばした。
彼は微笑を浮かべながらまた一歩下がる。

「追い掛けっこのつもりですか?全く、いつまでたっても貴方はどこか子供っぽいのですから」

思わず笑みがこぼれる。

対照的に侍女の顔がサッと青ざめた。

「お止め下さい!!」

ぎゅっと抱きとめられ、強制的に元の位置に戻される。
途端、彼の姿はふっとかき消えてしまった。

「あ、あれ?彼はどこにいってしまわれたの?ねぇ?」
「幻です。最初からあの方はいらっしゃらなかったのです」
「嘘よ、嘘をつかないで。だって、さっきまでそこにいたじゃないの」
「幻でなければ、夢です」
「お前も頑固者だね」

だんだん腹が立ってきた。

「出てお行きなさい。
ああ、そうね。きっと二人っきりの時間じゃなくなってしまったから部屋からいなくなってしまったんだわ。簡単なことだった」

侍女の目が悲しそうに揺れている。
ともすれば泣き出してしまいそうな。
何故?

「……昼餉です。召し上がって下さい」

入り口におかれていた盆をくれると、逃げるように立ち去っていってしまった。



「私は貴方がいればいいの。
あなた以外何もなくていいの。
嘘をつく人なんか、童話に出てくる雀みたいに舌を切り取られちゃえばいいのよ」

再び一人になれた私は、虚空に向かって呟いた。
あの人を探し、部屋の中をぐるりと見回す。

「あれ?」

机の上に何か白い物が置いてあるのが目に入った。

近づいて覗き込めば、手紙。
『お元気ですか?』から始まるあの人への手紙。


赤い鈴〜一般的解釈より〜の最初へ 赤い鈴〜一般的解釈より〜 6 赤い鈴〜一般的解釈より〜 8 赤い鈴〜一般的解釈より〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前