優依ちゃんのすごさ-1
久保田家 台所
幸子と恵美子が夕ご飯の支度中
幸子は台所に立ちながら考え事をしている
(朝夜と台所に立つようになったけど
ゆいちゃん これ 毎日していた訳よね
宿題もちゃんとこなして
生徒会もこなして…
実際 台所に立つようになって
あらためて ゆいちゃんのすごさが感じてしまう
わたし そんな相手と張り合っていたなんて…はぁ)
「ゆきちゃん ぼーっとしていると
指切っちゃうから気をつけて」
恵美子がぼーっとしている幸子を見て
声をかけてくる
「あ ごめんなさい ちょっと考え事してた」
「考え事?」
恵美子は手を動かしつつ横目で
幸子を見る
「毎日 こうやって台所に立つようにしたけど
大変だなぁって」
「そりゃぁ…生徒会とかあるでしょ
宿題もあるし無理しなくていいのに」
「ううん やり続けるつもりだけど
それで…ゆいちゃんがすごいなぁって改めて感じちゃって」
「あぁ…そう言うことね 確かに ゆいちゃんすごいね
毎日してるんでしょ 料理」
「うん それこそ 10月からずっとだもんね
実際にするようになって大変だと感じるから
余計にゆいちゃんがすごく感じて」
「なるほどね ゆきちゃんはゆきちゃん
ゆいちゃんはゆいちゃん そう考えた方がいいと思うね おばあちゃんは」
「うん ゆいちゃんやくみこちゃんに負けたくないって
思って頑張ってるけど…」
「コンプレックスつらい?」
「うん 二人とも良い子だし…余計に」
「そうね ゆいちゃんもくみこちゃんも良い子だもんね
あの子のわがままにも付き合ってくれたり」
「うん おじちゃんは ゆいちゃんとくみこちゃんが大好きなのはわかるから」
「20以上も下の相手に…と思っちゃうけど
それでも…二人のおかげで好き嫌いしないで
食べるようになったし…感謝してるわ わたしは」
(おばあちゃん…)
「夜はわたしが食べさせるから」
「ありがとうね まったく もう少し大人になってほしいわね おさむには はぁ…」
恵美子が困ったようにため息をつきながら言うと
幸子はどう言っていいかわからず夕ご飯の支度をするだけだった
…
……
………
夕ご飯が出来上がり
幸子の両親も帰宅してきて6時過ぎ
居間の机にそれぞれ座る
「わたしが食べさせるけどいいよね」
幸子は遠慮しがちにおさむに問いかけると
うんとだけ返事をするおさむ
(話したいことたくさんあるのに…話せない
しおりちゃんとさゆりちゃん…もうしたんだよね
結局 わたしが最後になっちゃった…かぁ
自分が招いたことだけど…くやしい)
おこってない?
おさむは幸子の顔を見ながら書く
「え? 怒ってないよ 顔に出てた?」
(しおりちゃんとさゆりちゃんのこと 顔に出てたのかな)
なんでもない
「そう…とりあえず、食べよう」
幸子は自分も食べながら
おさむの食事介助をして行くのだった