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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・4》-1

今日も階段を登り、屋上へ向かう。
昼休み、姫野とノワール、そしてあのバカと飯を食べることはすでに日常と化していた。

※※※

「…でな、ガガが…」

今日もバカは一人で喋り続けている。俺は基本的に無視。

「そうなんですか」

最近では、姫野も馴れてきたみたいで俺には適当に聞き流している様に見える。

※※※

「おっ…もう時間やな」

七之丞が携帯を見て呟いた。俺も自分の物を見る。
昼休みは残り僅か。

「ほな♪」
「また明日な」

七之丞と共に荷物を持って、姫野に声を掛ける。

「はい、また明日♪」

ニコリと姫野は微笑んだ。柔らかで、自然な笑顔。

また…明日…

心の中でもう一度繰り返した。不思議と心が穏やかになり、明日が楽しみになってくる…

癒されるというのは、こういうことなのだろう。

※※※

チャイムが鳴り響く。授業の終わり、帰宅の合図。

今日も睡魔と闘い、何とか一日を乗り切った。
何故、学校側はわざわざ眠くなる授業を飯を食った午後に行うのだろうか?
全くもって理解出来ない。効率が悪くなるだけじゃないのか。
どうせなら、腹ごなしに体育にしたらどうだろう。

そんなことを考えながら、校庭に目を向けた。辺りからは野球部の打撃音や、陸上部のマネージャーが告げるタイムなどが聞こえてくる。

頑張れよ、と心の中で応援した。帰宅部所属の俺に出来ることなどこんなものだ。

校門を出た。喧騒が次第に遠のいていく。

今日の晩飯…何にしよう…確か、うどんが冷蔵庫に二玉残っていたはず…
天麩羅は無理だから、油揚げに少し贅沢して玉子でも入れようか…

「…鬱輪さん」

不意に自分の名前を呼ぶ声が聞こえた様な気がして、後ろを振り返った。
長い髪の女───姫野が息切れをしながら走ってくる。

「姫野…」
「丁度…学校…出たの…を…見掛けた…ので…」

姫野はしばらく、肩で息をしていた。

「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です…」

呼吸を整えた姫野は少し笑いながら答えた。


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