女教師、告白。-1
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由美香は日月休みだから、週明けの月曜日、清香は由美香とは会わなかった。
結局あのメッセージにも返信はしていない。
火曜日ーー
由美香は朝礼が終わると直ぐに進路指導室に行ってしまったし、当然、職場で先日のことについて話したくはなかった。
だがーー
担任をしているクラスの、朝のホームルームが終わったあと、清香は職員室ではなく、進路指導室へと向かう。
ガチャリ、とドアを開ける。
ここはオープンスペースになっていて、由美香はいつも、特段声をかけられなければ振り向くことはない。
なのにーー
由美香は音のした方向に一目散に振り向いた。
「清香ちゃん」
清香だと気づいて、悲しそうな顔を浮かべた。
椅子から立ち上がり、上履きの音が足早に清香の耳に聞こえてくる。
清香はその勢いにドアの前から動くことができなかった。
由美香は清香の体を覆うようにして、手をドアノブにかけたかと思うと、内鍵を施錠する。
「えっ、先生……?!」
咄嗟の行動に、清香は戸惑いながら、あまりに近づきすぎている由美香の顔を見上げる。
「……返信しなかったの、謝ろうと思って来たんです。あの時はあたしも、人といたから……」
「堀尾くんと、寝たのわかったから? 気持ち悪いと思った?」
「待って、学校でする話じゃないです……せんせ……っ」
背の高い彼女に、覆いかぶさられるように抱きしめられる。
「ーー気が気じゃなかった。下品だって思われてるんじゃないかって」
「そ、そんなこと思うわけないし、離れて、先生。職場ですよ……落ち着いて」
由美香の吐息が首筋に吹きかかる。
「離れて」と言いつつ、清香が返信をしなかったことに、こんなにも由美香が取り乱していることに驚いてしまう。
ぞくっと清香の背中に寒気にも似た刺激が走った。
吐息が首に吹きかかるだけでなく、由美香の唇が、首筋に触れたからだ。
幾度も幾度も、首筋に柔らかな弾力が感じられる。
「先生、あとでゆっくり話そう、今はダメです」
唇を感じるそこに清香は手を差し入れて、真っ赤にした顔を背ける。
「あ……こんなの、ハラスメント、だよね……ごめん」
「……違う、ハラスメントなんて思ってない。先生のこと好きなのに、何でそんなこと言うんですか。とにかく、あとで話しましょう」
由美香の力の弱まったところで後ろ手に内鍵を解錠し、するりと体から抜け出してから、部屋を出る。
(先生……首にキス……)
職場での非日常的な行為は、由美香の一方的なものであって、どこか怖かった。その行為に驚く一方で、自分から返信がないことを由美香がひどく気にして、あんなにも狼狽えていることが嬉しかった。
顔を赤くさせながら、清香は職員室に戻った。