ふたり【序章・結】-1
「たっだいま―!」
『ボヨ〜ン!!』
………?……痛ってぇ…………何が起きたんだ?
……ドア開けて……中に飛込んだら……黒くてでかい「何か」にぶつかって……
遊輝はドアの前で情けなく尻餅をついていた。
地面に強く打ち付けた右肘を押さえながら、遊輝は顔をあげた。
「あ、あや姉……」
「・・・あんたね〜、『ただいま〜』ってここはアタシん家だよ!?もうちょっと遠慮というものを覚えなさい!ノックもしないでバァーンって……このご時世、そんなんじゃ早死にだよ?あんた。」
「ごめん、あや姉。……パチンコ?」
「フッ、そのとおり。なんだか今日は勝負師の血が騒ぐんだよ。夕飯、期待して待ってな!」
「う、うん。行ってらっしゃい。」
――ズンッズンッズンッ
行ったか……
しかし、俺がこんだけ吹き飛ばされたのに、あや姉ビクともしなかったな……
あの強大かつ頑健かつ勇猛な体は、間違いなくしずちゃん(○海キャンディーズ)レベルだ。
その彼女の名前は、
斎藤あや子。
身長は170cm以上あるとか。……うらやましい。
彼女を動物で表現すると「クマ」。襲われたらひとたまりもない。
……なんていう冗談はさておき、あや姉は痩せれば間違いなく美人の部類に入るだろう。豪快で器のでかい人間性には憧れるし、俺の中で彼女の好感度はMAXだ。
・・・そう。俺の愛しの人とはこの……ってウソだよ!
「あれ〜、ユキ〜?外〜?」
ガチャッ
「あれ?いない……
……って下!?なにしてんの?」
「エリカ……」
遊輝は立ち上がる。
「いや〜、それがあや姉と正面衝突しちゃってさ〜。」
思い出したら笑えてきた。
「お母さんと?・・・ってユキ!なんで笑ってるの!?……ま さ か亜美ちゃんの告白OKしちゃったの?いつもなら“どよ〜ん"ってなって『エリカ……また泣かしちゃったよ』くらい言って来るのに……!」
……このひとりで盛り上がっちゃってるのは、
斎藤英梨華(エリカ)。
俺と同い年で同じクラス。背丈は俺と同じ位で、見ての通り明るくて騒がしい。
ちなみに、一番最初に話してたのはこのエリカ。『帰ろ!ユキ』って言って来た子ね。
・・・そういえば言ってなかったけど
あや姉とエリカは親子。
あや姉、お母さんなんだよ。
なんで「あや姉」なのって?
だって薫(遊輝の母)があや姉って呼ぶんだもん。
それにさ、あや姉っていう呼び方が一番しっくりくるよ。
「エリカママ」とか・・・プッ、合わなくない?