ヘブンリーブルーの笑顔-5
「お兄ちゃん、また来てね。私、また腕によりをかけておもてなししてあげる」
さおりさんが、やっぱりあのときとは別人のように明るい表情と声で言った。
「おもてなししてあげるー」
しのちゃんが言い、俺たちは声を揃えて笑う。
最後に、しのちゃんとさおりさんのツーショットを、あのでかいシーサーが背景に収まるようにスマホで撮る。737-800に向かう俺を、ばいばーい、と、両手を頭の上で大きく振ってしのちゃんが見送ってくれる。
RWY22(22番滑走路。滑走路が1本だけの宮古空港の場合、北東から南西に向く方向が22番になる)から離陸すると、ちょうどターミナルビルの正面あたりで機首が持ち上がる。うちの空港と違って滑走路とターミナルとの間に距離がちょっとあるから、38Aに座る俺からはしのちゃんの姿はさすがに見つけられない。けど、そんなに寂しさは感じない。 737-800がゆっくりと左旋回に入る。眼下の畑や集落そして午前中の明るい日差しに浮かぶ小さないくつもの雲を、やがて現れるヘブンリーブルーの太平洋を、そしてついさっき撮ったしのちゃんとさおりさんの、俺にとってのこれぞしのちゃんとさおりさん、という笑顔を、今日のCAPの操縦のようにおだやかな気持ちで眺めた。
パーサーさんにあいさつをしてL1から降りると琴美が立っていた。
「お、おかえりー。どうだった宮古」
なんだこの、琴美の息臭を嗅いだ瞬間感じるほのかななつかしさは。
「いいとこだったよ。飯もうまかったし天気もずっと良かった。あ、これ、みんなにおみやげ」
雪塩さんどとバナナケーキと箱の入った青い紙袋を琴美に渡す。
「わ、さんきゅー。気つかわなくていいのに。で、あたし個人のは?」
この短いセリフの前半と後半とですんごい精神的矛盾を感じるのは気のせいか。
「ねぇよ……と言いたいとこだけど、その中の箱のやつは琴美用。彼氏と飲みなよ」
蒼の風、という、宮古島のラム酒だ。さおりさんのお店でもメニューに入っていて、柚希ちゃんもお気に入りらしい。
「ええええーマジで。や、なんか悪いなあ冗談で言ったのに。やだ、ありがとう」
にこ、と笑う琴美の表情も明るい。彼氏とはうまくいっていそうだ。
一応支店に顔を出して、急に休みを取ったことをみんなに詫びる。苦笑いして手を横に振った支店長に小さい声で「問題は解決しました、で、改めて発展的なご相談をしたくて」と言うと、わかった、とおだやかな表情でうなずいてくれた。
アパートに着き、リュックの中のオリオンを濡らしたキッチンペーパーに包んで冷凍庫へ入れる。こうすると十五分もしないうちにビールがキンキンに冷える。まだ陽は高いけど、さおりさんが作ってくれたおかずで一杯やりたい。そして夜になったら、しのちゃんたちとビデオ通話で話そう。や、でも、その前に。
下だけ裸になって、スマホを持ってベッドに横たわる。写真フォルダを開き、ゆうべ撮ったしのちゃんの姿を探す。宮古島の美しい自然や海や、さおりさんのお店で堪能した宮古島の名菜たちや、テーブル越しの柚希ちゃんと真奈ちゃんの笑顔や、さおりさんとしのちゃんのシーサーを交えたツーショット、に混じった、しのちゃんが「こいびと」の俺にしか見せない姿。小学3年生が全裸で幼い身体を晒し、満面の笑顔の頬の両側でダブルピースしている画像。タップして開き、しのちゃんの無邪気な無修正8歳ヌードを見ながらゆうべ記憶の海馬に叩き込んだしのちゃんの体臭と息臭そして膣臭を呼び出す。とっくに勃起しているおちんちんを、右手でゆっくりとしごく。くあああ、しのちゃん、俺の「こいびと」のしのちゃん。互いの愛を確かめ合い、宮古島の海風に吹かれながら「こいびと」の絆を取り戻すというかより強めることができたしのちゃんが見せてくれる、世界でいちばんかわいい笑顔と思春期に至る前の幼い身体の裸。まるでしのちゃんがいまベッドの中に一緒にいるかのようによみがえるしのちゃんの匂い。少しずつ「女の子」っぽくなっていく体臭。いつもと変わらないしのちゃん臭い息臭。そして、8歳の女児が一日、ぴったりと閉じたワレメの中で熟成させたあの幼い恥臭。しのちゃんの処女膜に密着して嗅いだあの幼女の膣臭を鼻先にぷん、と感じた瞬間、俺はしのちゃんの名前を呼びながら、旅の疲れなど感じないほどやんちゃに、そして大量に射精した。