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【ファンタジー 官能小説】

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5日め-1

目が覚めると、頭の痛いのがなくなっていた。そして、隣には、裸のまま、昨日と同じように、俺の腕にしがみつくように眠る、その子がいた。

「おはよう」

「…おはようございます」

「今日は、全然、頭痛くないみたい。君のおかげだよ」

「良かった…です」

嬉しいのか、嬉しくないのか、よくわからない反応だった。

「今日は、流石に仕事いくよ。君もずっと学校休んでるんでしょ?ほんとうにありがとうね?」

「…はい…」

また、中途半端や答え。

「ねえ、俺等って付き合うってことでよいのかな?」

中で出してしまったこともあるし、それに、こんな可愛い子と、こんな関係になることなんて、この先も、考えられないと思う俺は、微妙に触れないでいた、彼氏彼女になることを伝えてみた。

「…えっと…」

「いや?」

「ううん。そうじゃなくて…」

すぐに回答は難しいかと思い、キッチンと向かえば、2人分の珈琲を入れて、いつの間にか、Tシャツだけ羽織り、ベットに体育座りしている、その子へとマグカップを手渡した。

「あ、でも、そういえば、名前も聞いてなかったよね。ごめん。君、名前は?」

そう言いながら、朝のニュースを見ようとテレビをつけた。何気なく目に入ったのは、右上にある日付だった。『8月8日(木) 晴れ』という表示。おかしい。8月7日が最後の記憶。その日は、部長と一緒に大事なプレゼンをして、帰宅したはずだった。そこから、4回は寝ているわけで、8月12日になっているはず。

「ね?今日って何日?」

「えっと…8月8日…です…」

「え?待って。でも、君が来てから数日経ったよね?昨日の、その前も泊まっていったし」

「…」

わけがわからない。時間が止まっていたということ?でも、確かに、そこには、その子がいて、昨日はその子と身体を交えた。そこに、ニュースが流れてきた。

「昨晩、◯◯県◯◯市で、傷害事件が発生しました。逮捕されたのは、鬼頭和雄容疑者、33歳。警察の話では、市内の路地で、20歳の女子大学生に性的な暴行を加えようとしたことろ、通りがかった被害者の佐島武志さん、27歳に止められ、カッとなり、近くにあった石で頭を強く殴ったと言うことで、暴行の疑いで逮捕されました。怪我をされた男性は、意識不明の渋滞で、病院へ搬送されましたが、今も意識は戻っていないということです。続いて…」

「なに…これ?なんかの冗談?」

「…」

「え、だって、場所も名前も年齢も俺じゃん」

「…」

「ちょ、なに、教えてよ?」

長い沈黙の後、言いにくそうで、泣きそうな顔になったその子が口を開いた。

「…はい、今、武志さん、病院にいます」

「え?じゃあ、今は、ここはなに?」

「…夢というか、頭の中というか…たぶん、そんな感じ…」

「なにそれ、これ夢?じゃあ、なに?起きたら現実に戻る的な?」

状況もわからず、イライラしてきた俺はタバコに火をつけて、どっかりとカーペットの上に座り込んだ。

「助けてくれたんです。私のこと」

ゆっくりと、その子は、経緯を話し始めた。

「昨日も21時くらいに、バイト終わって、帰ろうとしたんです。駅について、アパートまで歩いてたら、突然、男に羽交い締めにされて。殺されたくなかったら静かにしろって。パニックで、声も出なくて…」

「無理矢理引っ張られて、駐車場に連れて行かれて」

「押し倒されて。ああ、レイプされるんだな?って。途中で、何人かすれ違ったんですけど、誰も助けてくれなくて」

「ああ、されたら、死のう。そう思っていたら、武志さんが来てくれて、その人から守ってくれたんですけど、殴られて沢山血がでて…」

「でも、ずっと私こと抱きしめて、大丈夫って」

「その後、警察が来て、連れて行かれて。私も事情聴取受けて。病院にも行ったんですけど、会えなくて。ずっと泣いてました。その後、親が来てくれて…でも、でも…武志さんが、死んじゃうって…」

「何でもするから、武志さんを助けてって、ずっと祈ってて」

「そしたら、声が聞こえたんです。武志さんの。フラッシュバックみたいに、前の記憶と言うか、映像が流れて、その度に、可愛いな?とか。あんな子と付き合えたらな?とか。ちょっとエッチなときもありましたけど。…で…その声が終わって、気がついたら、夢なのか、よくわからないけど、玄関の前にいたんです」

そこまで聞いて、ようやく思い出した。ほぼ毎日のように見かけた、あの子だった。

仕事終わりに駅前のコンビニでタバコを吸っていると、帰宅する、その子がいた。一目惚れに近かった。コンビニの中ですれ違ったが、その可愛らしい顔立ちと、ドアを出るときに、俺の荷物の多さに、ドアを支えてくれて、ニコッと微笑んだ表情に心を掴まれたのだった。

それからは、なるべく意識的に同じ時間に、同じ場所にいるようにしていた。ただ、いつもは喫煙所から眺めているだけだったが、心の中では、色々と呟いていた。口にするのは、恥ずかしいようなことも、心の中であれば、妄想としてイメージすることも。

そんな時、あの男を見つけた。そういえば、昨日もその前もいた。その子の少しあとをついて歩くような格好に、明らかにおかしいと感じていた。その日も同じで、ただ、いつもよりも、その子に近かった。なぜか、妙な胸騒ぎがして、俺は、タバコを消すと、その子を探した。

いつも、俺のアパートは直進だが、その子の姿を見ないということは、左に曲がった方に住んでいるのだろう?と思った記憶があり、身体は自然にそちらに向かっていた。


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