青の家~後編~-3
「地球が壊れるのが避けられないなら仕方無い。その先の未来にマリアが必要ならば、私たちはマリアの笑顔と素直な心を守ってあげたい、と、そうおっしゃってました…。きっと、あなたの大切な人は誰しもそう思う筈です」
マリアは流れる涙を指で拭った。まだ、吹っ切れた訳ではないけれど、その思いを無駄にしたくないと考えていた。
これが現実ならば受け入れないといけない、と…。
「青の家は言わば二つ目の地球。それぞれが出来る限りの能力を生かしてくれたおかげで、青の家は壊れませんでした。私たちを守ってくれました。これからは私たちが次の地球を造り、守っていくのです」
造るとか守るとか、マリアは正直よく分からなかった。しかし、マリアがもう一度会いたいと願う人たちは、マリアに『生きてほしい』と思っていることは痛いほど伝わってきた。
俯いていたマリアが顔を上げた。
「…大切な人を亡くしたのはあたしだけじゃないんだよね。礼だって…」
視線を礼へと移した。
「顔は知らないけど、どこかにいる筈の親を思って涙を流しているんでしょう?」
礼はゴシゴシと目を擦ると「まぁ…そんな感じ」と少し笑った。
「あたし、何していいか分からないけど…。でも、このままじゃいけないのは分かる。皆、私たちに未来を託したんだから、精一杯生きなきゃ…」
「…そうねマリア。ありがとう…」
ミス・ケリーの瞳から一筋、涙が流れた。
マリアは振り返って、青の家を見つめた。小さなプレハブ小屋くらいの深い青色をした家。マリアには、確かにそれは、地球に見えた。
[fin.]