幻を想う、その入口
〜白の世界〜-1
人は誰しも何かを探している。
ずっと探し続けて生きている。
ひょっとしたらその探し物は永遠に見つからないかもしれないのに。
「おや、こんな森の中でどうしたんだい?」
狩人が少年に問う。
「いえ、べつに」
少年は立ち上がるが、顔は下を向いている。
「どうした? 迷子にでもなったか?」
「いえ、違うんです」
少年はまだ下を向いている。
「じゃあキミは一体何をしているんだ」
「ちょっと探し物を」
そういえば、少年はさっきからずっとキョロキョロと地面を見渡していた。
「何を探しているんだ? おじさんが一緒に探してやろう」
「……」
「遠慮せずに言ってみろ。何を探しているんだ?」
そこで少年は顔をあげた。
その表情は突き刺さるくらい真剣な眼差しを伴っていた。
その意外な様子に狩人は少し驚きながらも、答えを促す。
「言ってごらん」
すると少年はゆっくりと口を開く。
「…ン…ジー」
絶妙なタイミングで森のざわめきに掻き消されてしまった。
「すまん。もう一度言ってくれんか」
「…ファンタジー」
「は?」
「だ、か、ら、ファンタジーを探しているんだよ」
「そ…そんな事言われてもな。おじさん分かんないや」
すると少年はまた下を向いてしまった。
「す、すまんな」
そう言って狩人はオロオロと立ち去って行った。