結愛の憂鬱…-3
【ご希望ならば、結愛さんの記憶も消すことができます。結愛さんの今後のことを考えると、あたしはこれを推奨します】
優子が何か言おうとしたが、悠子にそれを遮られた。しかし、優子の心の中の小さなやり取りは、結愛には伝わっていない。
「えっ?」
淡々と話す優子を前に、さっきまで感じていた一体感が薄れたように感じた。心細さを感じた結愛は、薄れたそれを求めて良子を、そして星司に視線を移した。
視線を受けた良子は天井を見上げ、星司は肩を竦めた。結愛の喪失感は更に深まった。
「い、今、決めないとダメですか」
ここに来た本来の目的ならば、今すぐに消すこと一択だった。しかし、結愛の本質がそれを躊躇させていた。
【はい。あたしたちは直感を大事にします。お立場上、色々と考えるとことがあるでしょうが、本質に関わることは、時間をかけて迷っても仕方がありませんから。で、どうします?】
「ちょっ、ちょっと待ってください」
直ぐに答えは出なかった。
【時間は在りません。間もなく他の人たちも起きる頃合いです。秘匿性があると言っても、これ以上、秘密を知る者が増えると面倒です。あっ、雄一と陽子ちゃんが起きそう】
優子の女体を借りた悠子が、もぞもぞと女の胸に手を伸ばした男と、その男の朝立ちの肉棒に手を伸ばす女を指差した。
「えっ?えっ?」
示された先に視線を移すと、覚醒途中の男女が抱き合う姿が目に入った。焦った結愛の思考が停止した。
【ごめんなさい。時間切れですね。記憶を消させて貰います】
その声と共に、辛うじて重なっていた悠子の存在が、自分の中から徐々に薄れていった。
【さようなら…】
消え行く心の中の声に合わせて、寂しく手を振る優子と良子が目に入った。
「いや…」
一気に襲いかかる焦りと寂寥。それに合わせて、結愛の目が霞んできた。
「いやあああああ!」
結愛は、記憶が消える恐怖から逃れるように、優子にしがみついた。
「ゆ、結愛さん…」
優子の女体の温もりと、さっきまでの濃厚な記憶を逃さないように、結愛は優子の胸にむしゃぶりついた。
不意を食らった優子が身を捩った。
【「ああん、乳首、ちゅぱちゅぱしないでぇ」】
優子と悠子の喘ぎ声が、結愛の耳と脳内に響いた。
(まだ、消されてない)
それでも不安が収まらない。星司を押し倒した結愛は、勃起する肉棒に股がろうとした。しかし、
「ストップストップ!次のモーニングまんこはあたしのですよ」
鼻息の荒くなった優子に、結愛が羽交い締めにされたのだ。
「だって、このままじゃ、記憶が無くなっちゃうよぉ!」
焦った結愛が、優子の束縛から逃れるように暴れた。
「大丈夫ですよ。あたしたちにそんな力は無いですって。ほら、暴れると、綺麗な肌に傷が付きますよ。てか、乳首捻りますよ」
暴れる結愛に、優子が諭し、最後に軽く乳首を捻った。
「はうぅ…」
乳首への刺激を拍子に、結愛から力が抜けた。
そして、そのタイミングで、覚醒した雄一と陽子が傍らに立った。
「こら悠子!気持ちよく寝てたのに、どうして無理やり起こすのよ!」
「そうだよ、姉ちゃん。陽子はギリギリまで休ませるはずだっただろ」
【うふふ、ごめんごめん。でも、文句は新たに参加が決まった彼女を見てから言ってよね】
そこで初めて、優子が羽交い締めしている女に、2人が目を向けた。
「えっ、ウソ…」「まさか、アッキー…」
驚いた2人が固まった。思考が停止する者が居れば、動き出す者が居る。