序章-1
オマケ【痴漢専用バス】
【序章】
プシュー!
優子たち新郎新婦の4人+1霊が、合同結婚式を挙げた翌早朝、そこのホテルの車寄せに、1台の大型バスが停まった。
そのバスの窓は、特殊な仕様によって、スイッチ1つで外からの視線を遮ることができる。今はバスを出迎えた配車係からは、車内の様子を窺うことはできない状態になっていた。
運転手に声をかけようと、配車係がバスの正面に廻ったときのこと。配車係の視線の端に、その文字が引っ掛かった。
「ん?」
一瞬、見間違えたと思った配車係が2度見すると、バスの正面上部の標識が【痴漢専用バス】の銘を点していたのだ。
本来ならば、まだ、それは表示されないはずだった。乗車するときに、義妹の優子を悦ばすためだけに、陽子が準備していたのだが、なぜか操作ボタンが押されていたのだ。
「ち、痴漢専用?」
配車係が驚くのを他所に、その文字表示がおもむろに変化した。
【新婚旅行イクイク極楽イキ〜】
「な、なに!」
そして、次々に変わる文字は、全て卑猥なことを連想させる文字だった。
極め付けは…
【露天ぶろを、マンキツ〜】の表示の『を』の位置が、点滅しながら句点の後に移動し、『を』から『お』に変化を遂げ、元々『を』が在った位置に『で』が現れた。次に『マン』が『まん』に変化した瞬間、その後ろに『こ』が現れたのだ。さらに『キツ〜』が『して〜』となった最終形が、
【露天ぶろで、おまんこして〜】になり、卑猥な4文字のみが、目立つように点滅を始めていた。
クドクドと書いたが、配車係の衝撃具合を記すために、この詳細な記述は仕方がないことだ。
「こ、このバスって、例のお客様たちの…」
配車係が思い浮かべたのは、昨日、ホテルスタッフたちが、密かに話題にしていた客たちのことだ。
噂1、合同結婚式を挙げた新婚カップルの新婚旅行先が、今どき珍しく、バスで行く温泉宿らしいとのこと。
噂2、その披露宴会場で、乱交パーティーが繰り広げられていたらしいこと。
噂3、披露宴の時間が過ぎると、上気した多くの者がスウィートルームに流れたこと。
噂4、大量の夕食のルームサービスと共に、グロス単位の精力剤と、箱詰めのままのウェットティッシュが届けられたこと。
噂5、スウィートルーム宛に、数台のバイク便で、急ぎ配達された荷物があり、その発送元のラベルが、大人の玩具のメーカーだったらしいこと。
噂6、それらのことで、スウィートルームで乱交パーティーが続けられたらしいこと。
クドクドと書いたが、配車係の衝撃具合を…以下省略。
そんな数々の噂がある客たちと、目の前のバスが繋がった配車係は、点滅する卑猥な4文字を見ながらごくりと生唾を飲み込み、勃起した股間を手で抑えた。