秘書の仕事~デモンストレーション-4
周りはパーティションが置かれており、照明は対応する医師の手元以外はほぼ落とされている。これなら自分の姿は見えることはない。
「今回は婦人科で使用する内視鏡になります。
従来よりも小型化され多少感じられていた痛みや違和感を更に抑えることができます。そしてカメラも従来のものより鮮明になり見逃しの防止が期待できます。それでは従来品と最新式との比較を行います。スクリーンにご注目ください。」
カーテンの向こうではカチャカチャと準備をする音が聞こえてくる。いよいよかと思うと体は緊張し、足に力が入った。
『大丈夫よ、もう少しリラックスしてね。』
「はい…ありがとうございます。」
冴子と医師の三田はマイクを使って会話をしている。途中で気分が悪くなったり、痛みを感じたり、その他医師からの指示がある可能性がある。ステージ上での直接会話は難しいため、このような措置がとられたのだった。
『じゃあ始めるわよ。痛かったら遠慮せずに言ってね。』
中に何かがスルリと入った感覚がある。多少の違和感はあるもののそこまで痛みや不快感は無い。
そして何よりも三田の声は柔らかく安心感がある。
始まる前に挨拶を交わしたが、見た目は眼鏡の似合うキリッとした感じだが、どこか子供らしさもある笑顔が素敵な女性という印象があった。
これなら問題なく進むだろう、冴子はそう思い目を閉じて終わるのを待った。