第六十五章 紳士と少女2-1
第六十五章 紳士と少女2
男は立っていた。
薄明かりの中に佇む天使を見つけると、声をかける事も出来ずに見つめていた。
美しい天使の瞳が潤んでいる。
一日充電した男は野獣に変わっていた。
そこには紳士の優しさは無く、目の前の獲物に欲情するオオカミの残忍さを宿していた。
男はゆっくりと近づいていく。
昨夜、息子夫婦が愛し合っていたであろうベッドに向かって。
一歩一歩足を踏み出す。
女は待っていた。
逃げる事も出来ず固唾を飲んでいる。
心は避けているのに、身体が動かない。
ここは夫婦の聖域である。
他の男を決して招き入れてはいけないのだ。
まして夫の父なのだ。
だが、ケダモノに変身した女は待っている。期待していた。
雨が更に激しさを増していった。