愛する弟の為の原点-6
「こんにちは、秋山くん…♪」
こんな可愛い声してたんだ…、秋山はポーッとしながらそう思った。
「えっ…、あっ…、あっ…」
想像だにしなかった状況に動揺が収まらない秋山。ただただ目の前の日菜が美し過ぎて、そして天使…、女神過ぎた。
「大丈夫…?」
優しい眼差しで見つめられ緊張は高まる一方だ。そして無意識に近い状態の言葉を口にする秋山。
「お、お姉さんが…、何で…?俺の…相手してくれる女の子は…?」
日菜はニコッと笑う。
「私…よ?」
「えっ…?」
信じられない言葉に目を丸くして驚く秋山。
「えっ…?えっ…!?う、嘘ですよね…!?」
「私…だよ?」
美しい微笑が眩しすぎて見ていられない。
(そんなはずない…。日菜さんが俺なんか相手にしてくれる訳がない。ゆ、夢か…)
まさか自分がこんなベタな仕草をするとは思わなかった。秋山は自分の頬を抓る。
「夢じゃないよ?秋山くん…」
「…」
それでも信じられない。すると立ち尽くす秋山の元に歩み寄りそっと手を握る。
「さ、こっち…」
まるで親に手を引かれる子供のようだ。
(や、柔らかい手…)
秋山は日菜にベッドの脇まで導かれた。
「座って?秋山くん…」
「は、はい…」
秋山が腰を降ろすと、日菜はすぐ隣に腰を降ろす。日菜の裸肩にドキッとする。いや、バスタオルに隠されていない部分にドキドキさせられる。そしてシャワーを浴びたのだろうか、シャンプーかボディソープの爽やかないい匂いに頭をやられそうになる。
(綺麗だけど…いやらしい…)
美しい少女のバスタオル巻姿に額から汗が流れて来る。秋山は慌てて手で汗を拭う。
(何がどうなったら日菜さんとこんな状況になるんだ…!?)
まだ混乱が治らない。恥ずかしすぎて日菜にもまともに目を向けられない。脱ぐっても滲む額の汗と掌の汗が秋山の体温の上昇を物語っていた。
そんな秋山を見つめる日菜だが、自分もそんな余裕はなかった。
(大丈夫、いつも健斗にしてる事すればいいんだから…。平気…、平気よ…)
健斗以外の男と肉体関係を結ぶのは勿論初めての日菜。健斗を相手にするのとは訳が違う事は理解していた。だが健斗と積み重ねた経験がきっと生きるはず、そう信じて秋山に体を抱かせる決意を強くして行くのであった。