愛する弟の為の原点-5
一度深呼吸をしてからドアをノックする秋山。
「こんにちは…!秋山です…!」
下の健斗にまで聞こえるぐらいに声を張った秋山。すると中から
「どうぞ…」
と言う声が聞こえた。
「し、失礼します!!」
秋山はノブを握りドアを開け中に入る。ただあまりの緊張のせいで女の子と顔を合わせるのが怖くなり、中に入りそのまま反転し部屋を背中にしてドアを閉める。
密室が何となく怖かった。胸がドキドキする。もう逃げ場はない。汗が止まらなかった。
「こんにちは…」
背後から声がした。そもそも日菜の声を良く知らない。部屋の中に日菜がいるのかいないのか、それともヤらせてくれる女の子しかいないのか判断出来ない。
(ヤバい…失神しそう…)
心臓がドキドキし過ぎて死にそうだ。振り返る勇気が出ない。まさかいざとなったらこんなに逃げ出したくなるとは思わなかった。泣いていいなら泣きそうだ。威勢が全くなくなった。すると続いて話しかけられる。
「こっち向いて、こっちに来て?」
いよいよ振り向かなくてはならない状況だ。秋山は再度深呼吸をし、ようやく勇気を振り絞る決心をした。頭の中で、イチ、ニの…サン!!とカウントし思い切って振り向いた。気づくと目を閉じたままだった。
秋山は恐る恐るゆっくりと目を開ける。すると目の前な体にバスタオルだけを巻いた1人の女の子の姿が見えた。緊張で顔まで確認する余裕はなかった。だがバスタオルを巻いた女の子が目の前にいる、それだけで心臓が壊れるかと思うぐらいに激しくドキッとした。
そして床に向けた視線をゆっくりと上げて行く。細い脚だ。白くて細く美しい脚。白のバスタオルからチラッと見えるフトモモが眩しい…。バスタオルの膨らみ…、少し谷間が見える。なかなかのオッパイの持ち主だ…。そして清らかな胸元から首。下から這うように視線を昇らせた目がいよいよ女の子の顔に辿り着く。顔を見た瞬間、秋山の思考回路が一瞬停止する。何故なら…
「えっ…!?お、お姉さん…!?」
それはいつも憧れの眼差しで見ていた健斗の姉、日菜であったからだ。その日菜がこちらを見て微笑んでいる。秋山は混乱した。何がどうなって自分の前にバスタオル姿の日菜がいるのか理解出来なかったからだ。秋山は口を開けたまま、まるで時間が止まったかのように呆然と日菜を見つめていた。