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私たちが部屋を借り直した理由
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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第12話 2つの嘘-1

 綾乃は一樹に嘘をついていた。

 あの夜、亮介には5回抱かれた。

 そのまま伝えると一樹はきっと傷つく。決して弱い方ではないのだが、多くてもせいぜい2回。むしゃぶりつかれるように求められたこともほとんど記憶に無い。そんな性生活を送ってきた綾乃にとって、亮介はこの上なく|逞しく《たくましく》頼もしかった。

 そして、もう一つ。

 バスルームで、綾乃は何にも邪魔されることなく亮介を迎え入れ、受け止めた。

 亮介が浴室に乱入してきたのは衝動的だったのか、あるいは意を決してのものだったのかはわからない。ただ、綾乃にとってはどちらでもよかった。亮介の求めに応じることが至極自然なことのように感じた。とは言うものの、初めての中出しが夫ではなく他の男性というのはさすがに気が引けるものがあった。罪滅ぼしというわけではないが、一樹の子種も受け止めることができて少し安心したというのが本音だ。

「ふうぅ……」

 喉が震えない、吐息だけのため息をつく。

 (この部屋で、あんなに……)

 ソファーに寝そべった綾乃の視界の隅に隣室が飛び込んでくる。普段は取り込んだ洗濯物を置いておくことぐらいにしか使っていないこの部屋が、今は随分と違って見える。おかしな話だが、部屋を見るだけで綾乃は潤んでしまうようになった。あの夜で、綾乃はちょっとだけ変わった。
 
 一樹から携帯にメールが届く。

(今日も綾乃を抱きたい。仕事終わったらすぐ帰るね。また連絡する)



 ◆


 (あの夜以来、俺は変わった)と一樹は考えている。

 倦怠期打破のために踏み切った挑戦だったが、結果はそれ以上の副産物をもたらした。綾乃に改めて胸をときめかせることになったし、自分が重度の寝取られ好きだと思い知らされたからだ。寝取られのどういうところに興奮するのかはまだよくわかっていない。だがしかし、他の男に抱かれる姿を見せられたその後に、綾乃を壊れるほど抱きたくなることだけは確かだ。そしてその余韻はまだ続いている――。

(とにかく綾乃が欲しい。毎日でも足りない)

 一樹は平日でも休日でも、綾乃を常に求めるようになった。玄関、キッチン、バスルームなんていうのはまだ常識的な範疇で、外出先で少しでも人気《ひとけ》のないスペースがあればすぐに手を出してしまう。犯罪にならないのなら、駅のホームでも綾乃を押し倒してしまいそうなほどだ。

 そんな一樹は寝取られという世界により深く踏み込んでいくうちに、もう一つの危険な遊戯について知ることとなった。



 貸し出しプレイ――。
 
 想像するだけで息が止まり、
 瞬きも忘れてしまう。
 軽い吐き気さえ覚える。


 綾乃の鳴き声がまだ微かに反響しているようなベッドルーム。息も絶え絶えで一樹が言う。

「綾乃……、亮介と二人きりでデートするのって……どう……?」

「え、一樹はいないの……?」

「うん。俺は行かない。その代わり……帰ってきたら……あいつに……何をされたかを……教えて欲しい」

 一樹はそう言って綾乃に微笑むと、重力に任せて頭を枕に落とした。


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