第9話 like a roller coaster-1
「ごめん、あまりにも気持ちよくて……我慢できなかった……ほんとごめん!」
亮介は必死に謝りながらティッシュを素早く綾乃の口元に持っていき、吐き出させる。綾乃はあまりの驚きで何も言えないが、気分を害したわけではなかった。ちょっとクセのある刺激が鼻腔に届いたが、亮介の体の匂いと相まって何とも言えない気持ちになる。思い出になりそうな香りがする――綾乃はそう思った。
「大丈夫だよ」
ニコっと笑みを浮かべた綾乃に亮介は救われる思いがした。愛おしくてそっと綾乃を抱き寄せてゆっくりと横になる。ピロートークが始まると足を絡ませながら体全体をフェザータッチで愛撫しながら、綾乃の目に視線を落とした。
「夢みたいだったよ。すごく気持ちよかった」
「……気持ちよかった……あたしも」
「なんか、綾乃さんとは初めてじゃないみたいな気もした」
「わかる、あたしも……」
亮介はまるで自分の恋人かのように綾乃を見つめ、キスをする。綾乃の口内に残る自分の精液が気にならないと言ったらウソになるが、それでもいい。今は綾乃の唇が欲しい。それに――。
「ねぇ、好きな体位はある?」
「そんな……言えないよ、恥ずかしくて」(笑)
「じゃあ、好きにさせてもらうね」
(……え?)
手早くゴムを着けた亮介は
素早く綾乃に覆い被さり、その太腿を左右に割る。
目の前にいる亮介の鎖骨から上だけが外の光に照らされている。
オスそのものの眼差しで綾乃を見ている。
「え、だって、男の人って……すぐには……」
男性は絶頂に達すると復活までには時間がかかる。性に関する知識の多くない綾乃もそれは知っている。現に、この口は亮介の粘液を受け止めたばかりだ。にもかかわらず、目の前で雄々しくメスを求めるのは他ならぬ亮介なのだ。
亮介の意思は血液に溶けていき、肉棒は腫れ上がる。
一瞬のうちに綾乃を刺す。
子宮口に達した先端の衝撃が綾乃の肚に伝わる。
普段はソプラノの綾乃の声は低く濁った。
「う"うッ――」
あの不意の射精はついさっきの出来事だ。一樹の邪《よこしま》なアイデアに端を発した、甘くて危険な戯れ。それが終わりを告げた瞬間だと綾乃は思っていた。亮介の急襲はすっかり気を抜いていた綾乃を固まらせ、状況の理解を阻んでいた。
そんな綾乃が我に返ったのは亮介が獣のような激しいピストン運動を止め、強く抱きしめてくれた時だった。
「ぁ、あん……」
「綾乃さん!」
「亮介くん……あん、ぁあん、あああああ……」「いい、いい、すごく気持ちいい……の……」
「綾 さん、俺も気持ちいい……」
「あ、あ、あ、あ、ああん、ああ、あああぁ……」
亮介がだんだん遠くにいるように思えてくる。口内発射される前に感じた気持ちよさや心地よさとも違う。見えるもの、耳から入ってくる音、そうした一切がどうでもよくなってくる。
「どう……しよう……あたし、おか……しくな……うぅ……」
「あ のさ……ん 」
「あん! もっと……もっと……来て……キ……て……」
「 」
「あ……ぁぁぁぁ……あ――」
綾乃はロープで腰を一気に天井に引っ張り上げられたかのように上半身を仰け反らせたかと思うと、すぐに脱力した。亮介は綾乃の動きに合わせて腰を振るのを止め、そのままドクドクと射精するのに身を任せた。