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私たちが部屋を借り直した理由
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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第7話 蚊帳の外-1

 「あや……の……?」

 一樹は思わず愛する妻の名を口に出してしまっていた。(あってはならないことが起きた)とでもいうように、そのショックを隠しきれない。

 一方で、綾乃のフェラチオは徐々に激しさを増していく。BPMで言うなら110ぐらいで安定した上下運動に変わる。

「綾乃さん……気持ちいい……」

 綾乃を抱いて欲しい、確かに一樹は余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》で亮介にそう言った。

 抱くという言葉の意味はシチュエーションや文脈によって変わる。大人の会話ならセックスを|直截《ちょくせつ》に意味するし、キスやフェラチオも含まれると言っていいだろう。そんなことはわかっているつもりの一樹だった。つまり、今目の前にある光景は《《あってはならないことでは無い》》のだ。

 そして、寝取られの文脈ではどうだろうか。

 一樹は、それぞれの行為の名称の周辺に付随する心情、そしてその移ろいまでは想像が及んでいなかった。

 息遣。
 声色。
 目線。
 目つき。
 肌の紅らみ。
 肢体それぞれの動き。

 そうしたことが表現してしまう感情の機微。

 頭ではわかっていたが、寝取られが何たるかを心ではわかっていなかった。一樹は今それを思い知らされている。

 そんな一樹の脳裏に、さっきの69の体勢がフラッシュバックする。亮介が綾乃の髪を掴んで今にもイラマチオに洒落込もうという場面だ。
 まるで亮介から、
 
 「君たち夫婦さぁ、こんなところまでちゃんと想定できてた?」
 
 と問われたかのようなあの沈黙。真意はわからないが、亮介があの時動きを止めたのは意図的なはずだ。そして、流れからして亮介は腕力で綾乃を押さえつけにかかる、一樹はそう確信していた。

 ところが、だ。

 亮介が押さえつけたようには見えなかった。むしろ、スッという音が聞こえるかのように綾乃は頭を落とし、亮介の男根を咥え込んだようだった。意思が読み取れるような綾乃の動き。咥えさせられたのではない、咥えたいから咥えたのだ。

「……あやの……あやの……」

 声はかけてはいけないというルールの設定はしていない。なんとなくダメな気がするから暗黙の了解として控えていた。他の二人もきっとそうだろう。そんなことはどうでもいい。今の一樹には目に涙を浮かべながら|譫言《うわごと》のようにその名を|呟《つぶや》くことしかできなかった。


 綾乃と亮介は夢中で互いを「愛し合っていた」。


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