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私たちが部屋を借り直した理由
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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第1話 突然の相談-1

 亮介はある日、友人夫妻の夕食に招待されることになった。彼らのマンションは亮介の部屋から徒歩10分程度。時々何かのイベントの後に寄ることはあったが、このようにわざわざ招かれるようなことはなかった。酒も少々飲みながら食事を楽しむ。よその家の家庭料理にはプロの作る料理とは違う、また別の美味しさがある。食後は穏やかな雰囲気の中で、知られざる夫のエピソードの妻への暴露といったような会話に花が咲く。そうしたネタも尽きてくる頃、軽く深呼吸した一樹が真剣な眼差しで亮介の方を向いた。

 「お前、寝取られってわかる?」

 「え……?」

 (もちろんわかる。ただ、綾乃さんの前でいきなりすごいワードをぶちこんできたな……。)

 明らかに動揺する亮介の姿は想定内だったのだろう、慌てずに一樹が言う。

「大丈夫、綾乃もちゃんと理解してる」

 亮介にしてみればだいぶ想定外だ。一樹の妻の綾乃は、彼女を知っている人なら男女問わずみんな口を揃えて清楚と評価するような女性だ。そんな彼女はテーブルに目を落としてうつむき加減でいる。怒っている様子ではないし、あたふたしているわけでもない。ただ、顔は真っ赤だ。

「え、いやあの……もちろんわかるけど……」

 頭をポリポリかくと、指先に頭皮の汗を感じた。一樹の目はまるで亮介を射抜くかのように強く、心を見透かしているようにも見える。

(たしかに綾乃のあらぬ姿を妄想したことはある。初対面から気が合ったし、そもそも女性として好きなタイプだ……顔も身体も)

 そんな、亮介の綾乃に対する劣情が顔に出ているぞといわんばかりに一樹の口から飛び出した言葉は、彼の予想を遥かに超えたものだった。


「もしお前さえよければ、綾乃を抱いてもらえないかな」

「…え? ぇ、ぇえええええええ⁉︎」


 腰が抜けそうな亮介に構うことなく、一樹が続ける。

「寝取られプレイが倦怠期気味の夫婦のカンフル剤になるって聞いたことない? で、俺ら夫婦もちょっと過激なことしてみようか、ってなったんだよね」

 未婚の亮介にはマンネリ夫婦の性生活がどのようなものなのかはわからない。それに、この二人がそんな状態にあるなんて知る由もない。

(寝取られ趣味って都市伝説レベルの話じゃないのか?)

 驚きを隠そうともせず、それでもなんとか平静を装いながら亮介は問う。

「……綾乃さんは嫌じゃないの? そして、俺が相手でも……大丈夫?」


「……うん」

 頬を一段と赤らめて声を絞り出す綾乃。亮介はこれほどお淑《しと》やかな女性には出会ったことがない。そんな綾乃さんが一樹のこんな突飛な話を承諾するなんて、信じられなかった。

「う、うそ……? マジで……」

「綾乃自身、あまりエッチな経験が無くてね。ちょっと奥手なとこがあるんだよね。まぁそれがまたかわいいんだけど」

「うん……なんかわかる」

「だから、猟奇的なことや生とかはしないでおいてね」

「もちろんもちろんもちろんもちろん」

 もちろんを4回も繰り返してしまうほど、亮介は前のめりになっていたのだった。


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